診療支援
診断

腹部膨隆
64歳 男性
西川 秀司
(市立札幌病院 院長)

現病歴:仕事中,突然腹部膨満感が出現.その後腹痛も出現,急激に増悪したため救急車で来院.

既往歴:24歳時にHBs抗原陽性の指摘を受けたことあり.しかし,その後は精査,経過観察など未施行.

生活歴:アルコールはビール700mL/日,毎日.タバコ(−).

家族歴:姉がB型慢性肝炎.

身体所見:意識は清明.身長166cm,体重72.0kg,体温36.0℃,脈拍84回/分(整),血圧88/66mmHg.腹部全体に膨隆,全体に圧痛(+),打診では濁音.

【問題点の描出】

HBs抗原陽性の指摘を受けたことがある64歳男性,突然の腹部膨満感,腹痛の出現.症状が強く,血圧が低値.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・腹腔内出血

・消化管穿孔

頻度の高い疾患

・腹水

・鼓腸

・腫瘍

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 血圧が低値であり,症状も強く早急な対応が必要である.急激な経過,身体所見からは腹腔内出血を第一に考える.

 患者情報などからは肝細胞癌の破裂の可能性を最も疑うが,腹部動脈瘤など血管性の疾患の可能性もある.

 腹部打診で鼓音でなかったことから鼓腸は否定的であった.

診断仮説(仮の診断)

腹腔内出血

・腹水

・腫瘍性病変

・消化管穿孔

・鼓腸

必要なスクリーニング検査

 全身状態から早急な原因検索,治療が必要な病態であり,血管確保ののち,ベッドサイドですぐに可能な検査を施行する.

 まずは採血,超音波検査を行う.

検査結果

血液所見:RBC 230/mL,Hb 8.5g/dL,Ht 25.0%,MCV 108.7fL,MCH 37.0pg,MCHC 34.0%.T.Bil 1.5mg/dL,γ-GT 421U/L,ALP 426U/L,AST 90U/L,ALT 42U/L,ChE 122U/L,Alb 2.0g/dL,Cr 0.81mg/dL,eGFR 74.1mL/分.HBs抗原(+),HBs抗

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