診療支援
診断

無尿・乏尿
59歳 男性
井尾 浩章
(順天堂大学医学部附属練馬病院腎・高血圧内科 教授)
富野 康日己
(順天堂大学 名誉教授/医療法人社団松和会 理事長)

現病歴:5日前に発熱と喉の痛みがあり,近医を受診し内服薬(NSAIDs)を処方され3日間服用した.発熱と症状は改善したが,2日前から排尿回数が極端に減ったことを自覚したために飲水量を増やしていた.

既往歴:55歳頃より高血圧(内服薬あり.薬物名不明).

生活歴:22歳時より会社勤務.喫煙歴なし.飲酒はビール500mLを週末程度.

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:意識は清明.身長168cm,体重56kg(近医受診時52kg),体温37.0℃,呼吸数24回/分,脈拍80回/分(整),血圧160/92mmHg.下腿に圧痕性浮腫を認める.両側下肺野にcoarse crackles(水泡音)を聴取する.腹部所見なし.臥位になると苦しいと訴え,座位で軽減する.

【問題点の描出】

高血圧の既往がある59歳男性.5日前の上気道炎症状と3日間の内服薬服用後の尿量低下.浮腫と臥位での呼吸苦(起座呼吸)を認める

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・慢性糸球体腎炎の急性増悪

・薬剤性間質性腎炎

・ANCA関連血管炎(多発性血管炎)

・急性尿細管壊死

・尿路系悪性腫瘍

・急性心不全

・心筋梗塞

・敗血症

・脱水

頻度の高い疾患

・慢性糸球体腎炎

・糖尿病性腎症

・腎硬化症

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 乏尿(尿量400mL/日以下)・無尿(尿量100mL/日以下)で受診した患者に対しては,〈p〉まず急性か慢性かの鑑別が重要である.慢性の場合は原疾患として糖尿病高血圧(腎硬化症)慢性糸球体腎炎などの基礎疾患の既往歴を聴取する.急性の場合は〈p〉腎前性(心筋梗塞脱水敗血症など)か腎性(急性糸球体腎炎多発性血管炎急性尿細管壊死など),腎後性(尿路系への悪性腫瘍の浸潤・両側水腎症など)かを鑑別する.乏尿・無尿と浮腫はさまざまな原因で起きる所見である.発症の経過(発症直後の受診なのか,発症か

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