現病歴:中学・高校の学校検診では尿潜血反応・蛋白陽性を時々指摘されていたが,社会人となってからの定期健康診断では尿所見異常は指摘されていなかった.35歳時の健康診断で尿潜血反応(2+),尿蛋白(1+)を指摘されるも放置していた.36歳時,感冒をきっかけに肉眼的血尿を認めたが数日で消失した.感冒から約2か月後の健康診断時に尿潜血反応(3+),尿蛋白(2+)と尿所見異常を指摘されたため受診となった.
既往歴:特記すべきことはない.
生活歴:22歳時より商社勤務.飲酒歴はビール350mLを週2回程度.喫煙歴なし.
家族歴:原因は不明だが,母親は60歳から血液透析療法を受けている.
身体所見:意識は清明.身長160cm,体重55kg,脈拍70回/分(整),血圧120/80mmHg,呼吸数14回/分.胸部聴診上異常を認めない.腹部は平坦・軟で,肝・脾を触知しない.下肢に浮腫を認めない.
【問題点の描出】
以前に尿潜血反応と尿蛋白の陽性を指摘されたが,持続性ではなかった.感冒時に肉眼的血尿を認め,その後も尿潜血反応陽性と尿蛋白は持続している.母親は血液透析治療を受けている.
診断の進め方
特に見逃してはいけない疾患
・腎細胞癌
・腎盂・尿管癌
・膀胱癌
・腎梗塞
頻度の高い疾患
・腎・尿路結石
・膀胱炎
・慢性腎炎症候群(特にIgA腎症)
この時点で何を考えるか?
医療面接と身体診察を総合して考える点
肉眼的血尿を認め受診した患者に対しては,まず腎・尿路腫瘍である〈除〉腎細胞癌,腎盂・尿管癌,膀胱癌などを除外する必要がある.一般に,これらの疾患の好発年齢は高齢である.青壮年で血尿を認める疾患としては,腎・尿路結石がある.このほか,血尿をきたす頻度の高い疾患として膀胱炎がある.単純性膀胱炎では頻尿や排尿痛,残尿感,尿混濁に加え,血尿などの自覚症状を認める場合が多いが,複雑性膀胱炎では無症状のこともある.
心房細動や弁膜症の
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