診療支援
診断

四肢脱力
30歳代 男性
松井 龍吉
(益田赤十字病院 副院長)

現病歴:2週間前に下痢症状があり,その後1週間程度で症状は自然に軽快した.来院4日前から右下肢の違和感を自覚するようになり,その後徐々に動きが悪くなった.3日前には左下肢にも同様の症状がみられ,さらに2日前からは両手の動きも悪くなった.来院前日には歩行もなんとか可能であったが,その後立位保持も困難となり受診となった.

既往歴:脂肪肝.

生活歴:喫煙歴なし.飲酒歴なし.

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:意識は清明.身長174cm,体重138kg,血圧147/78mmHg,脈拍72回/分(整),SpO2 98%(room air).頸部リンパ節触知せず.呼吸音 清,明らかな左右差なし.眼球運動正常.顔面筋麻痺なし.構音障害なし.挺舌可能.線維束性攣縮なし.四肢筋に萎縮なし.四肢に脱力症状がみられ,両上肢は徒手筋力テスト(MMT)4程度,両下肢はMMT 3程度.巧緻運動障害あり.四肢腱反射は消失し,筋トーヌスは低下.明らかな感覚障害なし.膀胱直腸障害なし.

【問題点の描出】

これまで健康な31歳男性.下痢症状後,1週間程度してから四肢に脱力症状がみられるようになる.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患・頻度の高い疾患

・頸椎症などの脊髄局所病変

・Guillain-Barré(ギラン・バレー)症候群

・周期性四肢麻痺

・低カリウム性ミオパチー

・中毒性ミオパチー

・脳血管障害(脳梗塞,脳出血)

・多発性筋炎

・重症筋無力症

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 筋力低下の発症形式,経過,分布などを考えて診断を進めていく必要がある.疾患によっては急速の呼吸筋麻痺をきたしてくるものもあり,救命処置を要する状態かどうかを判断する必要がある.また片側性のものは脳血管障害の可能性があり,早急に頭蓋内の精査が必要となる.今回の患者の場合,受診時,呼吸状態は保たれ,発語も特に問題はみられ

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