診療支援
診断

ふらつき,ろれつ不良
65歳 男性
長井 篤
(島根大学医学部内科学第三 教授)

現病歴:X年3月半ば頃からうまく走れなくなった.その頃から歩行時のふらつきと言葉のしゃべりにくさを自覚した.稀に立ちくらみの自覚あり.症状が改善しないため同年7月受診した.

既往歴:10年来2型糖尿病にて近医で加療中.

生活歴:喫煙1日10本を40年.飲酒なし.

家族歴:同様の症状の者なし.

身体所見:意識は清明.身長167cm,体重60.5kg,血圧120/67mmHg,脈拍78回/分,SpO2 97%(room air),体温36.6℃.心雑音なし,心拍に不整なし.神経学的所見として,瞳孔は正円同大,対光反射は正常.眼球運動制限はないが,左右の注視方向性眼振あり,眼球運動が衝動性(saccadic).表情筋筋力低下なし.聴力低下なし.発音は,パ,タ,カ行のいずれも不明瞭で爆発性(explosive).挺舌正中.上下肢のBarré(バレー)徴候やMingazzini(ミンガツィーニ)徴候陰性.深部腱反射は上下肢ともに亢進.Babinski(バビンスキー)反射は両側陽性.四肢筋力低下なし.筋トーヌスは上下肢ともに低下.知覚系に異常なし.立位で体の動揺あり.Romberg(ロンベルク)徴候陰性.指鼻指試験は終末時振戦(terminal tremor)あり.踵膝試験拙劣.排尿がやや出にくい.排便障害・発汗障害自覚なし.

【問題点の描出】

これまで健康な60代男性.バランスがとれない,しゃべりがうまくできないなどの運動障害が亜急性に進行している.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・脳梗塞,脳腫瘍

・脊髄小脳性疾患

・末梢前庭障害

頻度の高い疾患

・脳梗塞

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 本患者は,ふらつき,ろれつ障害という症状から運動障害と考えられるが,このような症候は錐体路障害,錐体外路障害,運動失調,筋力低下があれば起こりうる症状であり,知覚障害,特に深部感覚障害

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