診療支援
診断

呼吸不全
42歳 男性
中村 博幸
(東京医科大学茨城医療センター呼吸器内科 教授)
武田 幸久
(東京医科大学茨城医療センター呼吸器内科)
渡邊 裕介
(東京医科大学病院感染制御部・感染症科)

現病歴:5日前から38℃台の発熱,咳嗽,喀痰および頭痛が出現した.近医で感冒と診断され服薬受けるも改善がなかった.当初,呼吸困難は軽度であったが,本日朝に急に強くなってきたために救急車を要請し受診となった.なお,救急隊到着時にSpO2 70%のため酸素吸入を開始され到着した.

既往歴:特記すべきことはない.

生活歴,職業歴:喫煙は1日10本を20年.長年にわたり下水道関連の清掃に従事している.

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:JCS Ⅰ-2.身長168cm,体重60kg,体温38.6℃,脈拍数116回/分(整),血圧107/80mmHg,呼吸数32回/分,SpO2 90%(5L酸素投与下).口唇・四肢にチアノーゼを認める.心音に異常なし.両側肺にcoarse cracklesを聴取する.項部硬直なし.

【問題点の描出】

生来健康な42歳男性.5日前から感冒症状が出現し,近医で治療受けるも改善なし.呼吸困難は当初は軽度であったが,当日に強くなり受診.見当識障害あり.両側肺にcoarse cracklesを聴取する.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・気道異物

・緊張性気胸

・喉頭浮腫

・肺血栓塞栓症

・敗血症

頻度の高い疾患

・肺炎

・急性呼吸窮迫症候群(ARDS)

・左心不全

・胸膜炎

・間質性肺炎

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 急性呼吸不全を呈している患者には〈p〉迅速な診断と対処が必要である

 本患者は来院時にすでに急性呼吸不全の状態である.動脈血液ガス分析でPaCO2の上昇はなく,Ⅰ型呼吸不全と診断した.医療面接,身体診察,検査の手順で手際よく迅速に診断のプロセスに進む.経過から〈p〉呼吸不全は急速に進行しているため,気道確保などの救命処置の準備はしておく.実際に本患者では酸素吸入のみでは十分な酸素化が得られず,来院半日後には人工呼吸管理が必要となった.

 

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