診療支援
診断

強い心窩部痛
46歳 男性
東谷 迪昭
(東京逓信病院循環器内科)

現病歴:1週間前から労作時呼吸苦が出現.2日前に安静時に20分程度持続する強い心窩部痛を自覚.本日夜半,就寝中に冷や汗を伴う強い心窩部痛を自覚.軽快傾向なく救急要請し当院に搬送となった.

既往歴:検診で脂質異常症と耐糖能異常を指摘されている.

生活歴:自営業,最近は忙しくストレス過多状態である.飲酒は日本酒1合/日.喫煙習慣10本/日(最近は本数が増加していた).

家族歴:父親に心筋梗塞の既往,突然死の家族歴はなし.

身体所見:意識は清明.身長168cm,体重76kg,脈拍56回/分(整),血圧150/90mmHg,呼吸数20回/分,SpO2 96%(room airでSpO2 90%であり救急車内で酸素2L/分開始),体温36.4℃.心音;過剰心音なし,心雑音なし.呼吸音;下肺野に湿性ラ音を聴取.疼痛を訴えている心窩部に圧痛なし.腹部は平坦・軟で肝・脾を触知しない.下腿浮腫なし.

【問題点の描出】

虚血性心疾患の家族歴,脂質異常症を有する,喫煙習慣のある比較的若年男性で突然発症した冷や汗を伴う強い心窩部痛.なお2日前に同様の発作を認めている.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・特発性食道破裂

・胃潰瘍・十二指腸潰瘍の穿孔

・絞扼性腸閉塞

・急性胆囊炎・急性胆管炎

・急性膵炎

・脾梗塞

・腎梗塞

・急性冠症候群

・心膜炎

・急性大動脈解離

・胸腹部大動脈瘤破裂

頻度の高い疾患

・胃-十二指腸炎・潰瘍

・胃アニサキス症

・逆流性食道炎

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 心窩部痛は腹痛のなかでおそらく最も関係する臓器が多い部位であるため,幅広い鑑別診断が必要になる.腹痛の鑑別診断に関しての詳細は症候・病態編「腹痛」を参照いただきたい.本項では,心窩部痛のなかでよくある疾患ではなく,見逃してはならない疾患(critical disease)を中心に述べる.臓器別に上から,①消化管(食道:

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