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治療

E 解毒薬・拮抗薬──急性中毒治療の5大原則(4)
上條 吉人
(北里大学特任教授・中毒・心身総合救急医学)

 解毒薬・拮抗薬とは,薬毒物または毒性代謝物の毒性を減弱させる薬物である.適切な全身管理とあわせて解毒薬・拮抗薬を投与すれば,臨床症状および予後が改善する可能性がある.ここでは,現在用いられている代表的な解毒薬・拮抗薬をとりあげる.


受容体で薬毒物などと競合的に拮抗する薬物

1)フルマゼニル(アネキセート®注)


a.作用機序

 フルマゼニルはGABAA受容体・複合体にあるベンゾジアゼピン受容体でベンゾジアゼピン類と競合的に拮抗する(初期対応のポイント63).


b.投与法

‍ ベンゾジアゼピン類中毒:フルマゼニル(アネキセート®注)0.2~0.3mgの静注を覚醒が得られるまで繰り返す.総投与量が3mgに達しても反応が得られなければ,他の薬毒物による中毒や他の意識障害の原因を考える(ベンゾジアゼピン類).


2)ナロキソン塩酸塩(ナロキソン塩酸塩®注)


a.作用機序

 ナロキソンはオピオイド受容体でモルヒネやヘロインなどのオピオイド類と競合的に拮抗する(初期対応のポイント64).


b.投与法

‍ オピオイド類中毒:ナロキソン塩酸塩(塩酸ナロキソン®注)0.4~2.0mgの静注を中毒症状が消失するまで2~3分ごとに繰り返す.総投与量が10mgに達しても反応がなければ,他の薬毒物による中毒や他の意識障害の原因を考える(オピオイド類).


3)アトロピン硫酸塩(アトロピン硫酸塩®注)


a.作用機序

 アトロピンは,ムスカリン受容体で,アセチルコリンと競合的に拮抗する.


b.投与法

‍ 有機リン中毒:気管支分泌物の増加や気管支攣縮による喘鳴をみとめたら,重症度に応じてアトロピン硫酸塩(アトロピン硫酸塩®注)1~3mgを静注する.その後は気管支分泌物の量や喘鳴が改善するまで2~5分ごとに繰り返し投与する.または,アトロピン硫酸塩(アトロピン硫酸塩®注)の持続静注を0.05mg/kg/時で開始し,適宜増減する.症

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