解毒薬・拮抗薬とは,薬毒物または毒性代謝物の毒性を減弱させる薬物である.適切な全身管理とあわせて解毒薬・拮抗薬を投与すれば,臨床症状および予後が改善する可能性がある.ここでは,現在用いられている代表的な解毒薬・拮抗薬をとりあげる.
受容体で薬毒物などと競合的に拮抗する薬物
1)フルマゼニル(アネキセート®注)
a.作用機序
フルマゼニル薬はGABAA受容体・複合体にあるベンゾジアゼピン受容体でベンゾジアゼピン類と競合的に拮抗する(初期対応のポイント63図).
b.投与法
ベンゾジアゼピン類中毒:フルマゼニル薬(アネキセート®注)0.2~0.3mgの静注を覚醒が得られるまで繰り返す.総投与量が3mgに達しても反応が得られなければ,他の薬毒物による中毒や他の意識障害の原因を考える(→ベンゾジアゼピン類).
2)ナロキソン塩酸塩(ナロキソン塩酸塩®注)
a.作用機序
ナロキソンはオピオイド受容体でモルヒネやヘロインなどのオピオイド類と競合的に拮抗する(初期対応のポイント64図).
b.投与法
オピオイド類中毒:ナロキソン塩酸塩(塩酸ナロキソン®注)0.4~2.0mgの静注を中毒症状が消失するまで2~3分ごとに繰り返す.総投与量が10mgに達しても反応がなければ,他の薬毒物による中毒や他の意識障害の原因を考える(→オピオイド類).
3)アトロピン硫酸塩(アトロピン硫酸塩®注)
a.作用機序
アトロピンは,ムスカリン受容体で,アセチルコリンと競合的に拮抗する.
b.投与法
有機リン中毒:気管支分泌物の増加や気管支攣縮による喘鳴をみとめたら,重症度に応じてアトロピン硫酸塩(アトロピン硫酸塩®注)1~3mgを静注する.その後は気管支分泌物の量や喘鳴が改善するまで2~5分ごとに繰り返し投与する.または,アトロピン硫酸塩(アトロピン硫酸塩®注)の持続静注を0.05mg/kg/時で開始し,適宜増減する.症
関連リンク
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/[9]ベンゾジアゼピン類
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/[20]オピオイド類
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/[24]有機リン
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/[25]カーバメート
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/[47]シアン化合物
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/[43]硫化水素
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/[38]鉄化合物
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/[40]無機ヒ素化合物
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/[39]水銀元素,無機水銀化合物
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/[11]アセトアミノフェン
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/[36]メタノール
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/[37]エチレングリコール
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/[29]アニリン系除草剤
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/[42]一酸化炭素
- 治療薬マニュアル2024/フルマゼニル《アネキセート》
- 治療薬マニュアル2024/亜硝酸アミル《亜硝酸アミル》
- 治療薬マニュアル2024/デフェロキサミンメシル酸塩《デスフェラール》
- 治療薬マニュアル2024/ジメルカプロール《バル》
- 治療薬マニュアル2024/アセチルシステイン《アセチルシステイン》
- 治療薬マニュアル2024/チオ硫酸ナトリウム水和物《デトキソール》
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/[10]バルビツール酸類
- 今日の治療指針2023年版/亜硝酸アミル
- 今日の救急治療指針 第2版/農薬中毒(有機リン,パラコート,他)
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/[11]アセトアミノフェン
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/[46]水溶性の低い刺激性ガス
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/[12]アスピリン
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/[40]無機ヒ素化合物
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/[43]硫化水素
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/[47]シアン化合物