診療支援
治療

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上條 吉人
(北里大学特任教授・中毒・心身総合救急医学)

最初の10分メモ

含有する製品

・金属鉛は,加工が容易であることなどから古くから広く用いられてきた.また,快削性を高めるため合金成分として用いられてきた.鉛金属および鉛合金は,鉛蓄電池の電極,釣りの重り,鉛管,はんだ,銃弾,アクセサリーなどに用いられているが,いずれも鉛を含有しないものに置き換えられつつある.無機鉛化合物は,塗料,顔料,鉛ガラス,セラミックなどに用いられている.四エチル鉛は,以前はガソリンのオクタン価を上げる目的で添加されていたが(有鉛ガソリン),現在は,日本を含む先進国では使用が禁止されている.空気,水,食物にも鉛が含まれ,大人は,空気から1日当たり平均20~40μgを吸入し,その30~40%を吸収し,水や食物から1日当たり平均300μgを摂取し,そのうち5~10%を吸収している.


診断のポイント

・鉛への曝露歴または曝露が生じる状況がある患者に,腹部疝痛,貧血,下垂手や垂れ足などの神経症状,腎障害,痛風などを認める.

・小児に,腹部疝痛,易刺激性などの精神症状,痙攣発作などを認める.

・急性中毒では,腹部X線で消化管内のX線不透過像を認める.

・慢性中毒では,骨基質の代謝障害によって長幹骨の骨端板などで無機物の沈着や石灰化が亢進するので,長幹骨X線における,骨端板の高密度の線(lead line)を認める.

・血中鉛濃度の高値を認める.ただし,血中の鉛の99%は,赤血球に濃縮されているので全血中濃度を測定する.

・鉛によってヘム合成が抑制されると,成熟赤血球は影響されず,新生赤血球が影響されて,鉛の曝露後2~3週間で,赤血球遊離プロトポルフィリン(free erythrocyte protoporphyrin;FEP)および亜鉛プロトポルフィリン(zinc protoporphyrin;ZPP)の上昇(>35μg/dL),尿中のコプロポルフィリンおよびδ-アミノレブリン酸

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