診療支援
治療

42一酸化炭素
上條 吉人
(北里大学特任教授・中毒・心身総合救急医学)

最初の10分メモ

発生する状況

・COの発生源は,不具合のある暖房設備または給湯設備,火災,木炭や練炭などの不完全燃焼,ガソリン車の排気ガスなどである.


診断のポイント

■急性期

・現場にCOの発生源があり,同じ現場にいた人に頭痛,めまい,嘔気,意識障害などを認める.

・現場の空気中に高濃度のCOを検出する.

・CO-Hb濃度の高値を認める.

・乳酸アシドーシスを認める.

・図1に示すように,CTまたはMRIで両側の淡蒼球に異常信号を認める.

■遅発性脳症

・急性期の中枢神経症状が消失,もしくは,部分的に改善してから数日から5~6週間が経過してから,遅発性に精神・神経症状が急速に出現・悪化する.

・図2に示すように,MRI(T2-強調画像,拡散強調画像,FLAIR画像)で脳室周囲の大脳白質および半卵円中心に両側,び漫性,合流性の高信号域を認める.


治療のポイント

■急性期

・患者をベッド上で絶対安静として,酸素要求量および酸素消費量を減らす.

・常気圧酸素(NBO)療法または高気圧酸素(HBO)療法のいずれかを選択.

■遅発性脳症

・これまでのところエビデンスのある治療法はない.


Do&Don't

・CO-Hb濃度は,重症度,低酸素ストレスの強さや持続時間を反映しないことに注意.低濃度のCOに長時間曝露された場合ではCO-Hb濃度が10%以下でも重症であることがある.

・CO-Hb濃度は,最終曝露からの時間や病院への搬送中の酸素投与などによって著しく変化することに注意.

・非喫煙者のCO-Hb濃度の正常値は2%未満であるが,喫煙者の正常値は5~13%であることに注意.

・通常のパルスオキシメータは,比色法を利用した測定法であるが,O2-HbとCO-Hbを区別できないために,重症のCO中毒患者の酸素飽和度を過大評価してしまうことに注意.

・自殺による場合は,過量服薬との複合自殺であることがあるので注意.

・もともと心疾患

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