症候を診るポイント
●酸素飽和度はすみやかにチェックする.
●喘鳴を聴いたら低調か高調かを区別する.
●吸気と呼気のどちらに強いかを意識する.
▼定義
喘鳴は呼気がしづらい状況での呼吸困難をいう.患者は「ゼーゼーする」などの訴えをすることが多い.
▼病態生理
気道の狭窄により引き起こされる症状である.気管支喘息の場合には気道への好酸球の浸潤による機能的な気管支攣縮が原因となる.一方,うっ血性心不全の場合には中枢気道の浮腫による気道の器質的な狭窄で生じる.アナフィラキシーや血管浮腫などで喉頭レベルの中枢気道が75%以上の狭窄に至ると高度の喘鳴を生じる.
▼初期対応
喘鳴を訴える患者では生命に危険を及ぼす疾患の除外が重要である.酸素飽和度を測定し呼吸不全の有無を評価する.一般に吸気時喘鳴が頸部で聴かれたらアナフィラキシーや急性喉頭蓋炎などを考え気道確保の準備もして原因検索と治療を並行して行う.アナフィラキシーではアドレナリン薬の筋肉注射(筋注)とヒドロコルチゾンの静脈注射(静注)をただちに使用する.急性喉頭蓋炎では気道確保とインフルエンザ菌を想定してセフェム系の抗菌薬をすぐに投与する.
気管支喘息の場合にはβ刺激薬の吸入をすみやかに開始し抗炎症作用の強いメチルプレドニゾロンなどを中心に静注する.アスピリン喘息が明らかな患者では防腐剤によるアレルギーを起こすことがあるので添加物を含有していないベタメタゾン薬などのステロイドを静注する.
うっ血性心不全の患者ではフロセミド薬などのループ利尿薬の静注が前負荷をとり喘鳴も呼吸困難もただちに改善する.ただし,収縮期血圧が100mmHg以下や大動脈狭窄の患者では利尿薬は安易に使用しない.
▼鑑別診断
➊アナフィラキシー
来院直前の食べ物や状況を確認し疑ったらすみやかに初期治療を開始する.
➋急性喉頭蓋炎
急性の経過で39℃を超える高熱と頸部の喘鳴を訴えたら
関連リンク