症候を診るポイント
●数日単位の体重増加は,まず心不全,腎疾患などによる体液過剰の状態を疑う.
●肥満と判定した場合は,二次性肥満(症候性)を考慮.
▼定義
体重増加として,脂肪組織が過剰に蓄積した状態を肥満という〔本章「肥満」の項(→)も参照〕.
急性の体重増加は浮腫(水分貯留)が原因のことがほとんどであり,慢性体重増加の原因のほとんどは慢性浮腫または肥満である.
▼病態生理
体重増加としての肥満は,基礎疾患がない単純性肥満と基礎疾患を有する二次性肥満に分類される.肥満の90%以上占める単純性肥満は,カロリー摂取量とエネルギー消費量の不均衡により脂肪組織が蓄積されることによって生じる.
浮腫の発症要因は,局所における要因と全身的な要因とがある〔本章「浮腫」の項(→)を参照〕.
▼初期対応
体重増加の原因が急性浮腫である場合,緊急の対応が必要となることがある.体重増加の原因が肥満の場合は,一般的には緊急性はなく,単純性肥満か二次性肥満の鑑別を進める.
▼鑑別診断
急性浮腫では,まずは体液過剰をきたす心不全,肝硬変,腎不全などが挙げられる.
二次性肥満の原因で知っておきたいのは,薬剤性と副腎や甲状腺などの内分泌機能異常である.具体的にはグルココルチコイド,抗けいれん薬,抗精神病薬,抗うつ薬,避妊薬,糖尿病薬など,内分泌疾患では,Cushing(クッシング)症候群,甲状腺機能低下症,高インスリン血症,多囊胞性卵巣症候群,性腺機能低下などである.またまれな遺伝性疾患であるBardet-Biedl(バルデ-ビードル)症候群〔Laurence-Moon(ローレンス-ムーン)症候群〕,Prader-Willi(プラダー-ウィリー)症候群などがある.インスリノーマは悪性疾患のなかで唯一体重が増加する疾患である.
▼基本的治療方針など
急性に体重増加をきたす場合のほとんどは浮腫によるものである.慢性的
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