診療支援
治療

【6】るい瘦
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山本 由布
(筑波大学・地域総合診療医学)
吉本 尚
(筑波大学准教授・地域総合診療医学)

症候を診るポイント

●詳細な病歴聴取と身体診察で鑑別診断を行う.

●摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスに注目.

▼定義

 著しく体脂肪量および体蛋白質組織が減少した状態.一般的には標準体重から10~20%の体重減少をやせ,20%以上の減少をるい瘦と定義することが多い.また,短期間での体重減少がある場合,6~12か月で5%以上の体重減少を臨床的に有意とみなすことが多い.

▼病態生理

 消費エネルギーが摂取エネルギーを上回るとやせが進むため,大まかな病態としては食物摂取量の不足,消化・吸収障害,栄養素の利用障害,代謝・異化の亢進,栄養素の体外への喪失などがあげられる.

▼鑑別診断

 病歴では,いつからどの程度体重が減少したか,意図して減らしたものか,食欲の有無と実際の食事摂取量,随伴症状,月経歴,薬剤歴,嗜好品,社会的背景などを注意深く聴取する.身体所見は原疾患によって異なるが,高度のるい瘦では皮膚・筋肉の萎縮,徐脈,低体温,低血圧,浮腫などが共通して認められる.鑑別疾患は,体重減少が意図的な場合は神経性やせ症が重要である.意図的でない体重減少の場合,るい瘦をきたす疾患は多岐にわたる.表1-49の器質的疾患のほか,特に高齢者では社会的要因で食物不足に至ることもある.食欲が保たれているにもかかわらず体重減少が進行する場合は消費カロリーの増加が疑われるため,悪性腫瘍や内分泌疾患,炎症性疾患などを考える.

 スクリーニング検査としては,血液検査では血算,総蛋白およびアルブミン,電解質,血糖値およびHbA1c,腎機能,肝機能,TSH,CRPまたは赤沈,肝炎・HIVなどのウイルス検査,その他として尿検査,便潜血,胸部X線を行い,年齢に応じた悪性腫瘍のスクリーニングを検討する.疑う疾患により,必要に応じて追加検査を行う.

▼基本的治療方針など

 基礎疾患によっても転帰は異なるが,意図しない体重減少がみら

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