診療支援
治療

【2】失神
syncope
水野 篤
(聖路加国際病院・循環器内科)

症候を診るポイント

●病態生理を理解する.

●病歴聴取にこだわりを.

●リスク因子と層別化のテクニックを.

▼定義

 失神の定義は「一過性の意識消失の結果,姿勢が保持できなくなり,かつ自然に,また完全に意識の回復がみられること」と日本循環器学会における「失神の診断・治療ガイドライン(2012年改訂版)」で記載されている.よく臨床的に注意されるのは意識障害であり,こちらはよく意識の回復も起こらないというように理解されていることが多い.

▼病態生理

 基本的な病態生理としては「脳全体の一過性低灌流」であり,通常は収縮期血圧の突然の低下により発症することが多い.よく失神の原因としては,反射性失神,起立性失神,不整脈,器質的心肺疾患の4つに分類される.

 上述のガイドラインでは,起立性低血圧による失神・神経調節性失神・心原性失神という分類を用いている.しかし,重要な病態生理的な観点で,再度理解しておいてほしいこととしては,失神の定義は「一過性」であり,脳の低灌流の一過性というのはだいたい8~10秒ぐらいであり,自然に回復する病態(可逆的)ということを再度認識してもらわなければならない.そうすれば,まず心原性で不整脈などが最も原因として考えやすいことが想像されるだろう.なぜなら根本的な器質的心肺疾患も失神を起こしやすい病態の元としては影響するが,「一過性」には器質的疾患は回復することはないことを理解すればよい.また反射性失神・起立性失神というものも「可逆的」な要因(姿勢・状況)によって発症することも理解されやすいのではないかと考えられる.

▼初期対応

 初期対応としては,当然病歴聴取,心電図,心臓超音波の3点セットである.何より病歴聴取がポイントとなることが多いのでここはしつこく聞くしかない.聴取するポイントは以下の通り.

●発症形態

●発症時の姿勢

●誘発因子:運動の最中,食事など

●失神前の付随症状:悪心・

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