診療支援
治療

【9】不随意運動
involuntary movements
野溝 崇史
(湘南厚木病院・総合内科)
和足 孝之
(島根大学医学部附属病院・卒後臨床研修センター)

症候を診るポイント

●不随意運動の分類には①律動性,②動きの速さに注目する.

●突然発症の経過や,片側性の症状の存在は,脳血管障害など二次性の不随意運動の可能性が高く,緊急を要する可能性がある.

▼定義

 不随意運動は運動障害の1つである.運動障害とは,脱力によらずに随意・自動運動が過多あるいは過少になる病態と定義される.一般に自己制御困難な運動過多の状態を広義の不随意運動とよび,本項では振戦,ミオクローヌス,舞踏運動,バリスム,ジストニア,アテトーゼについて述べる〔第10章「振戦,不随意運動」の項()も参照〕.

▼病態生理

 不随意運動の代表的なものは大脳基底核の病変で起こり,錐体外路系の障害によるものであると考えられている.脳血管障害や神経変性疾患など器質的障害だけでなく,薬剤や代謝障害など機能的障害によっても起こる.

▼初期対応

 不随意運動を診断し治療するためには,患者の動きを正確に分類することが重要となる.不随意運動が律動的(規則的)かどうかで大きく分けられる.律動性の不随意運動として代表的なものは振戦であり,不随意運動のなかでも最も多くみられるものである.不規則な動きであれば,その動きの速さにより分類される.速くて不規則な不随意運動には,ミオクローヌス,舞踏運動,バリスムがあり,遅い動きをするものにはジストニア,アテトーゼがある.それぞれの動きの特徴に関しては後述するが,診察のコツとしては実際に不随意運動を起こしている筋に触れると,動きの性状が把握しやすい.静止時に運動がみられなければ,姿勢をとらせたり動作をさせたり,暗算をさせるなど緊張させると不随意運動が出やすくなることがある.インターネット上の動画では数多くの不随意運動を参照することができる.また,患者の承諾を得て,動きの動画撮影をして記録することや,自分で実際に動きを真似してみることも診療の向上につながる.

▼鑑別診断

 

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