疾患を疑うポイント
●放射線治療終了1~3か月後に出現する,照射野に一致したすりガラス様陰影,境界明瞭な浸潤影を認めた場合に疑う.ただし,治療終了直後にも出現する場合もある.
学びのポイント
●癌の治療中は易感染性であり感染症や,癌自体の再発が放射線肺臓炎との鑑別になる.
●定位照射など照射法の進歩があり頻度が低くなるが,照射部位が複雑になるため,放射線治療計画での照射範囲の確認が必要である.
▼定義
胸部への放射線治療の有害事象として起こる肺の炎症である.肺の炎症は放射線肺臓炎と放射線肺線維症に分類されるが,前者は急性期で後者は慢性期としての一連の経時的変化と考えられる.
▼病態
放射線肺臓炎は放射線治療終了後1か月以内にも出現することがあるが,一般には1~3か月で出現して,3~4か月で著明になる.急性期の場合には間質の浮腫・炎症,肺胞上皮細胞の障害,肺胞マクロファージの活性化が発現する.慢性期には間質の線維芽細胞の増生,筋線維芽細胞への分化が起こりさらに線維化が進展する.
頻度や重症度は,照射量〔平均肺線量(mean lung dose:MLD)が大事〕,照射される肺容積,併用する化学療法,肺の基礎疾患(既存の間質性肺炎)と関係する.40グレイ以上ではほぼ必発とされている.Grade 2(RTOGの基準)以上の放射線肺臓炎の発症リスクを低下させるには,V20(20グレイ以上照射される肺体積の全肺体積に対する割合)が40%を超えないようにすることが重要である.
CTシミュレーションによる3次元の放射線治療計画により,ターゲットの線量を低下させることなく正常肺と心臓の平均線量を有意に減少できるといわれている.同時化学放射線療法の場合は,重症肺炎の発症を軽減するためにV20≦35%を目標とする場合が多い.
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