疾患を疑うポイント
●喘息患者のコントロールが悪化し,末梢血好酸球増多,高IgE血症がみられた場合に疑う.
●肺浸潤影もみられるが,中枢性気管支拡張や粘液栓がより特徴的である.
▼病因
アトピー素因を有する喘息患者がAspergillus fumigatus(Af)を吸入すると,喘息患者特有の粘稠な喀痰中でAfが増殖し,その抗原に対するⅠ型,Ⅲ型,一部Ⅳ型アレルギー反応を介して,肺組織の破壊を伴うアレルギー性肺疾患(ABPA)を生じると考えられている.したがって本症は,Afによる肺感染症ではなく,アトピー型喘息患者に発症するAfを原因とするアレルギー性肺疾患である.
▼症状
発症に男女差はなく,好発年齢は30~40歳代である.頻度の高い症状としては,38℃を超えない微熱,喘鳴,咳嗽,喀痰などがあり,血痰を伴うこともある.粘液栓の喀出は,注意して問診すればかなりの頻度で認められ,本症を示唆する重要な症状である.患者には,“明らかに固形物と認識できる成分を有する喀痰”という聞き方をするとよい.
▼検査成績
検査所見としては後述する診断基準に挙げられているように,末梢血好酸球増加,血清総IgE値の増加,Afに対するⅠ型・Ⅲ型アレルギー陽性反応〔即時型・Arthus(アルチュス)型皮膚反応,特異的IgE抗体や沈降抗体〕,喀痰からのAf培養などの結果が得られるが,これらの検査の陽性率はステロイド治療の有無や病期によって異なるため,各検査項目の病期別の陽性率をよく理解しておく必要がある.
喘息のみでは胸部X線で肺野の異常陰影は原則として認められず,喘息患者の胸部X線で異常陰影を認めた場合にはまずABPAを念頭におく必要がある.ABPAの胸部異常陰影は,中枢性気管支拡張とそこに充満する粘液栓によるmucoid impaction,および末梢の好酸球性肺炎からなる.
胸部X線では,肺門側から連続する