診療支援
治療

2 顕微鏡的多発血管炎
microscopic polyangiitis(MPA)
須田 隆文
(浜松医科大学教授・内科学第二)

▼定義

‍ 小血管(毛細血管・細小動静脈)を主体とした壊死性血管炎をきたす疾患で,高頻度にMPO-ANCAが陽性となる.

▼病態

 ANCAは好中球などの細胞質に存在するアズール顆粒に対する抗体であり,好中球の細胞表面上に移動したアズール顆粒とANCAが結合し,好中球を活性化し,好中球性炎症を惹起すると推定されている.

▼分類

 肺以外の臓器病変については別項〔第9章の,第13章の〕を参照されたい.

間質性肺炎

 合併率は10~35%とされ,多くは特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)と類似した臨床像,画像所見を呈する.60~70歳の高齢者が多く,間質性肺炎がMPA発症に先行することもある.時に非特異性間質性肺炎(nonspecific interstitial pneumonia:NSIP)や特発性器質化肺炎(cryptogenic organizing pneumonia:COP)と似た画像ならびに組織所見を呈することもある.

肺胞出血

‍ 本症の経過中,10~45%に合併し,生命予後を規定する重要な病変である

▼疫学

 わが国における患者数は8,511人(2015年)で,結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa:PN)の2倍以上である.男女比はほぼ1:1で,好発年齢は55~74歳と特に高齢者に多い.

▼診断

 わが国では診断基準に基づいて診断されることが多い.〔第13章「顕微鏡的多発血管炎」の項の表13-16を参照〕

自他覚症状

 発熱,倦怠感などの全身症状に加え,紫斑,網状皮斑,皮下結節などがみられる.その他に,関節症状や,多発性単神経炎による神経症状,消化管病変による腹部症状(腹痛,下血など)を呈することもある.間質性肺炎や肺胞出血を合併した場合は,咳嗽や労作時呼吸困難,血痰などを認める.

血液検査

 赤沈上昇,CRP

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