▼定義
敗血症や肺炎,外傷などの種々の病態を誘因として発症し,肺の炎症とそれに伴う肺微小血管の透過性亢進を特徴とする非心原性肺水腫である.
▼病態
ARDSの誘因となる基礎疾患は多岐にわたるが,敗血症と重症肺炎の頻度が高く,それぞれARDS全体の25~40%を占める.こうした基礎疾患に伴う高サイトカイン血症などにより活性化した好中球が肺内に過剰に集積し,蛋白分解酵素や活性酸素などの組織傷害性物質を放出する.その結果,肺胞隔壁(血管内皮,肺胞上皮)の透過性が亢進し,非心原性肺水腫を生じる.発症早期のARDSにおける組織学的変化は,びまん性肺胞傷害(diffuse alveolar damage:DAD)とよばれ,間質と肺胞における蛋白含量の多い出血性の水腫が特徴的である(図2-44図).
ARDS患者にみられる生理学的変化としては,①シャント形成による低酸素血症,②肺コンプライアンスの低下(肺