診療支援
治療

1 胸腺上皮性腫瘍
thymic epithelial tumors
佐々木 治一郎
(北里大学教授・新世紀医療開発センター)

▼定義

 胸腺上皮から生じる腫瘍と定義される.胸腺腫胸腺癌胸腺神経内分泌腫瘍の総称である.

▼病態

 正常胸腺はTリンパ球の成熟に関与し,免疫形成に重要な器官であり,成人以降に退縮するのが一般的である.胸腺上皮性腫瘍は正常胸腺組織をその発生源とする腫瘍であり,腫瘍が正常胸腺の組織学的形態を残し(organotypic tumor),Tリンパ球を伴っていれば(functional tumor)胸腺腫であり,その腫瘍細胞には細胞異型を認めない.一方,腫瘍が胸腺の組織学的形態を認めず(non-organotypic tumor),Tリンパ球を伴わず(non-functional tumor),細胞異型を認める場合は胸腺癌となる.胸腺上皮腫瘍のうち,細胞が神経内分泌腫瘍の特徴をもつ場合は胸腺神経内分泌腫瘍に分類される.

 胸腺腫には自己免疫疾患を合併することが知られており,重症筋無力症(合併率16~24%)赤芽球癆(1.5~2.4%),ガンマグロブリン異常(低ガンマグロブリン血症や高ガンマグロブリン血症)などを合併する.

 胸腺癌は悪性腫瘍であり,組織亜型としては扁平上皮癌が最も多い.

 胸腺神経内分泌腫瘍には悪性度の低いカルチノイドから,悪性度の高い神経内分泌癌までが含まれる.カルチノイドが遺伝性腫瘍症候群である多発性内分泌腫瘍(multiple endocrine neoplasia:MEN)1型に高率に合併する.

▼疫学

 胸腺腫・胸腺癌は30歳以上に発生することが多く,男女差を認めない.罹患率は人口10万人あたり0.44~0.68人(胸腺腫)でありまれな腫瘍である.胸腺癌や胸腺神経内分泌腫瘍は胸腺腫よりさらにまれである.

▼分類

 病理分類にはWHO分類(2015年版)が用いられ,胸腺腫はリンパ球の含有率と腫瘍細胞の形態を中心にType A,Type AB,Type B1,Type B2

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