診療支援
治療

3 無症候性心筋虚血
silent myocardial schema
下川 宏明
(東北大学大学院教授・循環器内科学)

▼定義

 狭心症と同様の可逆的な心筋虚血が存在するにもかかわらず,胸痛などの自覚症状を伴わない場合を無症候性心筋虚血とよぶ.

▼病態

 高齢者,陳旧性心筋梗塞患者,糖尿病患者では心筋虚血を生じた際に無症状である頻度が高い.無症候の原因として,痛覚閾値が高いことのほか,血中βエンドルフィン増加,心臓自律神経障害の関与が指摘されており,疼痛閾値の修飾には内因性オピオイドや炎症性サイトカインなど,多くの因子が関与することが知られている.

▼疫学

 安定狭心症患者や急性期を過ぎた心筋梗塞患者の20~50%に無症候性心筋虚血が認められるといわれる.

▼分類

 Cohnらにより以下の3種類に分類されている.Ⅰ型:無症候で冠動脈疾患の既往もないが,心筋虚血がある.Ⅱ型:明らかな心筋梗塞の既往があり,心筋虚血が存在する.Ⅲ型:有症候性と無症候性の心筋虚血が混在する.

▼診断

 無症候性心筋虚血は1960年代に開発されたHo

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