診療支援
治療

【4】心原性ショック
cardiogenic shock
吉田 賢司
(岡山大学大学院講師・循環器内科)
伊藤 浩
(岡山大学大学院教授・循環器内科)

疾患を疑うポイント

●意識レベルが低下しており手足が冷たく冷汗を伴っている場合は,まずショックを疑う.ショックでは多くの場合,血圧が低値.

●会話が少しでも可能であれば,ショックの原因となった原疾患に基づく症状(急性心筋梗塞による心原性ショックなら胸痛など)を訴えることがある.

学びのポイント

●ショックは初期には可逆的だが短期間で不可逆的となり,最終的には多臓器不全から死に至る病態.

●心原性ショックの原疾患は心筋梗塞が多く,経皮的冠動脈形成術の普及した現代でも院内死亡率は約30%.

●ショック状態の患者では,診断のための評価と同時に支持療法を開始する必要がある.的を絞った問診と身体診察(四肢冷感・冷汗)を行い,血液検査・心電図・胸部X線撮影を行う.ショックの鑑別には心エコー図検査がきわめて有用.

●急性心筋梗塞による心原性ショックに対する最も有効な治療は早期再灌流療法.

▼定義

 心ポンプ失調により各臓器の組織レベルにおける微小循環系の有効循環血液量が急激に減少し,低酸素血症に基づく重篤な変化が生じる末梢循環障害.心ポンプ失調を原因としているため急性心不全の1つの病態.主な病因を表3-20に示す.

 なお,ショックは病態により①循環血液量減少性ショック,②心原性ショック,③心外閉塞・拘束性ショック,④血液分布異常性ショックに分類される.ショックの病因として循環器領域が関与しているのは②および③の一部である.②の心原性ショックは十分な左室充満圧があるにもかかわらず,著しい左室心拍出量減少による全身の低灌流が特徴である.③の心外閉塞・拘束性ショックは左室心拍出量減少が右室心拍出量減少による左室充満圧低下に関連したものであり,循環器領域では心タンポナーデや急性肺血栓塞栓症が該当する.

▼病態

 心原性ショックは心ポンプ失調,すなわち心拍出量が急激に減少して生じる病態である(図3-46).心拍出量

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