診療支援
治療

3 拘束型心筋症
restrictive cardiomyopathy(RCM)
坂田 泰史
(大阪大学大学院教授・循環器内科学)

疾患を疑うポイント

●正常または正常に近い左室収縮能.

●左室拡大や左室肥大の欠如.

●強いうっ血所見と心房拡大.

学びのポイント

●左室駆出率が正常にもかかわらず心不全症状を呈する場合にこの疾患を疑う.

▼定義

 RCMは次の4項目を満たすものと考えられている.

 ①硬い左室の存在,②左室拡大や肥大の欠如,③正常または正常に近い左室収縮能,④原因(基礎疾患)不明.

▼病態

 左室収縮能,壁厚が正常にもかかわらず,強い左室の拡張能障害により左房圧,右房圧が亢進し,うっ血所見を呈する.左室拡張能低下の理由は不明とされている.

▼疫学

‍ 多くは小児期に発症し,成人にて初回心不全をきたす症例は少ない.2016(平成28)年において拘束型心筋症にて医療受給を受けている者は50人とされており,希少難病といえる.

▼診断

 診断は統合的に判断されるが,▼定義で挙げた原因不明の4つを確認する.

症状

 まずうっ血症状が前面に出ることより,呼吸困難,浮腫をきたす.また,左室駆出率は一見正常であるが,心拡大をきたさないことより一回拍出量は減少する.よって,心拍数は上昇する傾向にあり,動悸を訴える者も多い.

身体所見

 頸静脈怒張を呈する.右心不全が進行すると肝腫大,腹水が認められる.聴診にてⅢ音,Ⅳ音を聴取することが多い.

画像診断

 胸部X線写真では,心房の強い拡大を反映して特徴的な所見となる.

 心エコーまたはMRIが最も重要な検査であり,左室内腔拡大・心室肥大の欠如,心房拡大を確認する(図3-54).心エコーでは,僧帽弁流入血流速波形による左房圧上昇所見,肺高血圧所見を認める.

心内膜心筋生検

 特異的な所見はないが,心筋間質の線維化が強い症例が多い.その他,心筋細胞肥大,錯綜配列,心内膜肥厚などを認める.

鑑別診断

 左室拡大・肥大を呈さず左房圧の亢進を認め,正常(に近い)左室駆出率をきたした症例が比較的多いものの,基

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