▼定義
正常P波が消失し単形性の連続した迅速な心房波(粗動波)を認める不整脈である.心拍数は粗動波と心室波の伝導比によって決定される.
▼病態
原因は心房細動とほぼ同じと考えてよい.メカニズムはリエントリーである.
▼疫学
詳しい疫学は不明であるが,心房細動よりは罹患率は低い.ただし,心房粗動と細動を行き来するタイプがあるため,これを含めると比較的頻度の高い不整脈である.
▼分類
通常型(リエントリーが三尖弁周囲を反時計方向に回転)と非通常型に分けられる.
▼症状
心房波と心室波の伝導比が2:1以上となると動悸を自覚する.伝導比が1:1の場合は心拍数が300拍/分前後となるため,失神発作を呈することもある.逆に,伝導比が3:1以下の場合であれば無症状のことが多い.
▼診断
診断は心電図検査でなされる.
➊心電図所見
通常型では,下壁誘導(Ⅱ,Ⅲ,aVF)において鋸歯状波(ノコギリ波)と称される大きな粗動波が認められる(図3-26図).その周期は240~300拍/分である.非通常型では小さな粗動波が認められ,その周期は340~440拍/分とやや高い.2:1あるいは4:1のように偶数伝導比となることが多い.心房細動と行き来するタイプも多くみられる.
▼治療
治療法には,薬物治療とカテーテルアブレーションがあるが,治療の中心はカテーテルアブレーションである.
➊薬物治療
抗凝固療法の適応は心房細動に準じる.ワルファリンまたはDOACが使用される.リズムコントロール療法を行う場合,心機能が正常であればⅠ群抗不整脈薬(Naチャネル遮断薬)が選択される.しかし,その効果は心房細動に対してよりも低いため,レートコントロール療法が選択されることが多い.主にβ遮断薬が使用される.
➋カテーテルアブレーション
症状を有する場合の第一選択治療.成功率がきわめて高く,合併症が少ないからである.通常型心房粗動に対し