診療支援
治療

1 三尖弁狭窄症
tricuspid stenosis(TS)
奥田 真一
(山口大学大学院・器官病態内科学)
矢野 雅文
(山口大学大学院教授・器官病態内科学)

▼定義

 成人における三尖弁狭窄症(TS)の大部分はリウマチ性で僧帽弁膜症の合併が多いが,近年のリウマチ性弁膜症の減少により頻度は減少している.リウマチ性以外の病因には,右房腫瘍,カルチノイド症候群(高頻度に三尖弁閉鎖不全も伴う),外部からの圧迫,心内膜心筋線維症,三尖弁の感染性心内膜炎に伴う疣腫がある.三尖弁輪縫縮術後には,術後TSが生じうる.

▼病態生理

 三尖弁の狭窄により,拡張期に右房から右室への流入障害が生じ右房圧が上昇する.これは吸気時や運動負荷時に増強し,呼気時に低下する.右房圧の上昇により静脈圧上昇と低心拍出をきたす.

▼臨床症状

 自覚症状では,右房圧・静脈圧の上昇と低心拍出により,全身倦怠感,腹部膨満,食欲不振,肝腫大,頸静脈怒張,腹水,下腿浮腫などの右心不全症状を生じる.

 身体所見では,聴診で胸骨左縁下部を最強点とする拡張期ランブル(僧帽弁狭窄症よりソフトでピッチが高く,吸気時に増強する)を聴取する.

▼検査

胸部X線

 右房と上大静脈の拡大による右第2弓の突出がみられるが,肺動脈の拡大は伴わない.

心電図

 洞調律では右房負荷を反映して,Ⅱ,Ⅲ,aⅤFでP波が増高し肺性P波を示す.多くは慢性的な右房負荷に伴い心房細動を呈する.

心エコー図

 三尖弁のエコー輝度増強と肥厚,石灰化による可動制限,交連癒合による拡張期ドーミングが観察される.三尖弁口の狭小化と右房拡大を認め,連続波ドプラ法で三尖弁通過血流の拡張期平均圧較差の増大がみられる.

心臓カテーテル検査

 右心カテーテル検査にて右房-右室拡張期圧較差を測定し,狭窄の程度を評価する.

▼診断

 右心不全症状と胸骨左縁下部の拡張期雑音から本症が疑われ,心エコー図,心臓カテーテル検査により確定診断される.

▼治療

 右心不全徴候に対する内科的治療として塩分制限や利尿薬投与を行う.治療困難な右心不全が存在する場合に三尖弁交連切開術や弁

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