診療支援
治療

3 連合弁膜症
combined valvular disease
奥田 真一
(山口大学大学院・器官病態内科学)
矢野 雅文
(山口大学大学院教授・器官病態内科学)

▼定義

 連合弁膜症とは,複数の弁が同時に障害されているときの総称である.かつて原因の多くはリウマチ熱だったが,発症頻度の減少により動脈硬化性,感染性心内膜炎,粘液腫様変性の割合が増加している.種々の弁膜症の組み合わせにより臨床的特徴は異なり,おのおのの弁膜症の重症度に応じて内科的治療および外科手術の適応と術式が決まる.

▼分類

大動脈弁閉鎖不全症(aortic regurgitation:AR) 兼 僧帽弁閉鎖不全症(mitral regurgitation:MR)

 高頻度にみられる合併で,MRはARによる左室拡大により二次的にも起こりうる.

大動脈弁狭窄症(aortic stenosis:AS) 兼 僧帽弁閉鎖不全症(MR)

 リウマチ性が多いが,動脈硬化性ASにMRを伴ったり,先天性ASに僧帽弁逸脱を伴う場合がある.ASによる左室収縮期圧の上昇はMRの程度を増悪させる.一方,MRにより左室駆出血液量は減少しASの重症度評価が困難になる.ASの治療によりMRが軽快することがある.

僧帽弁閉鎖不全症(MR) 兼 僧帽弁狭窄症(mitral stenosis:MS) 兼 三尖弁閉鎖不全症(tricuspid regurgitation:TR)

 合併頻度が多い.多くは高度の肺高血圧により拡大した右室からの機能性TRがみられる.僧帽弁手術に加え三尖弁形成術が行われることが多い.

僧帽弁狭窄症(MS) 兼 大動脈弁閉鎖不全症(AR)

 多くがリウマチ性でMSが前景に出る.MSにより心拍出量が低下するため,ARの重症度が過小評価されうる.また,MSに特徴的なⅠ音の増強や僧帽弁開放音は減弱する.

僧帽弁狭窄症(MS) 兼 大動脈弁狭窄症(AS)

 ほとんどがリウマチ性で女性に多い.二重狭窄とよばれ,MSの病態が主に現れやすく,左室充満の制限により左室-大動脈圧較差は減少し,狭窄後大動脈拡張,左

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