診療支援
治療

4 動脈管開存症
patent ductus arteriosus(PDA)
八尾 厚史
(東京大学講師・保健・健康推進本部)

学びのポイント

●特徴的な連続性雑音のみで疑いがかかる病態であり,左室容量負荷と肺高血圧の合併に注意する.

▼定義

 動脈管は胎生期に右室-肺動脈からの血液の約90%を下行大動脈に送る役割を担っている.生後,動脈血酸素分圧の上昇と血中プロスタグランジンの低下に伴い生後1~2日で通常閉鎖するが,遺残した場合に動脈管開存となる.

▼病態

 高圧系の大動脈から低圧系の肺動脈への左右シャントの原因となり,内径の大きさがそのシャント量による肺高血圧症発症リスクを規定する.高肺血流は左室容量負荷になり,肺高血圧発症は右室への後負荷をもたらす.肺高血圧の進行により,左室容量負荷は軽減し病態は右室への圧負荷が主体と変化する.Eisenmenger(アイゼンメンゲル)化では,著明な圧負荷と軽度から中等度の容量負荷により右室は著明に肥大し軽度拡張する.この時期には左室の前負荷は低下するため,残存する肥大と右室に圧排され狭小化した内腔を有する左室となる.

▼疫学

‍ 妊娠初期の風疹ウイルス感染は高率に動脈管開存をもたらす(先天性風疹症候群).単独の動脈管開存は,2,500~5,000人に1人(0.02~0.04%)とされ,先天性心疾患の2~4%程度を占めると考えられる.

▼分類

 多くが左肺動脈基部と下行大動脈とを結ぶ位置に存在し,まれに両側に存在することもある.内径の大きさ・合併するほかの心奇形に注意して病態を把握することが重要である.

▼診断

‍ 主に心雑音により発見される.胸骨左上縁で聴かれるⅡ音を頂点とする漸増漸減型の連続性雑音(Gibson雑音)は有名であり,背部でも聴取されることが多い.しかしながら,肺血管抵抗値が上昇し肺高血圧が進行してくると左右シャントが低下し,収縮期雑音が低下しⅡ音が亢進する.Eisenmenger化すると動脈管接合部以下の下肢のみでのチアノーゼ(低酸素血症,SpO2低下)や足趾のば

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