▼定義
胎生期に共通肺静脈と左心房の間の連続性が遮断されたため,すべて(総肺静脈還流異常)もしくは一部(部分肺静脈還流異常)の肺静脈が,心臓近傍のいずれかの体静脈を経由して右心房に還流する疾患.
▼病態
➊総肺静脈還流異常
全肺静脈血が右心房に還流するため,高度の右心系の容量負荷,および心房レベルでの右左短絡によるチアノーゼの出現が病態の主体となる.本来消退する共通肺静脈の途中もしくは体静脈結合部では狭窄を伴うことが多く,この場合出生直後から著しい肺うっ血をきたす.
➋部分肺静脈還流異常
心房もしくは上下大静脈レベルでの左右短絡となり,心房中隔欠損類似の右心系の容量負荷をきたす.右肺静脈の還流異常では,還流部の対側に静脈洞型の心房中隔欠損を合併することが多い.
▼分類
➊総肺静脈還流異常
1)上心臓型(Ⅰ型,47%,図3-104図a)
Ⅰa:無名静脈に還流,Ⅰb:上大静脈に還流
2)心臓型(Ⅱ型,30%,図3-104図b)
Ⅱa:冠静脈洞に還流,Ⅱb:右心房に還流
3)下心臓型(Ⅲ型,18%,図3-104図c)
門脈もしくは下大静脈に還流
4)混合型(Ⅳ型,5%)
➋部分肺静脈還流異常(図3-105図)
右肺静脈上大静脈還流,右肺静脈右房還流,右肺静脈下大静脈還流(後述のシミター症候群を含む),左肺静脈無名静脈還流に分けられる.
▼疫学
総肺静脈還流異常は先天性心疾患の約0.8%,部分肺静脈還流異常は心房中隔欠損の9%に合併する.
▼診断
➊臨床症状
総肺静脈還流異常では,生後間もなくからチアノーゼ,多呼吸,呼吸困難を呈する.
部分肺静脈還流異常では,心房中隔欠損類似の血行動態で,通常無症状に経過する.
➋検査所見
1)胸部X線
肺静脈狭窄のない総肺静脈還流異常では,心拡大と肺血流の増加が,肺静脈狭窄例では著しい肺うっ血所見が加わる.上心臓型(Ⅰa型)では,垂直静脈,無名静脈,右上大静脈の拡大により,特