▼定義
大動脈弓の一部が高度に狭窄(大動脈縮窄)する,もしくは欠損(大動脈離断)する疾患.多くは心室中隔欠損を伴う(図3-102図).
▼病態
➊大動脈縮窄(図3-102図)
大動脈峡部への動脈管組織の迷入により,生後動脈管の閉鎖とともに限局性な狭窄を生じる.心室中隔欠損を伴わない単純型では,縮窄が進行すると下行大動脈の血圧が低下して乏尿や無尿に陥る(ductal shock).また左心室の著しい後負荷により肺うっ血が加わる.心室中隔欠損を伴う複合型では,肺血流の著しい増加による肺うっ血をきたす.大動脈弁および弁下狭窄を合併することがある.
➋大動脈離断(図3-103図)
全例で心室中隔欠損を伴う.動脈管が閉鎖すると,下行大動脈の血流が遮断され,ductal shockをきたす.動脈管が維持されると,肺血流の著しい増加により,重篤な心不全と肺うっ血をきたす.大動脈弁および弁下狭窄を合併することがある.
▼分類
大動脈縮窄では,動脈管起始部より近位で狭窄する管前型と,遠位の管後型がある.
大動脈離断では,離断部位によりA型,B型,C型があり,日本人ではA型の頻度が高い(約40%).B型の約半数は22q11.2欠失症候群に合併する.
▼疫学
全先天性心疾患のうち,大動脈縮窄は2~5%,大動脈離断は1%とされている.縮窄はTurner(ターナー)症候群に合併することが多い.
▼診断
➊臨床症状
管前型縮窄および離断では,下半身の動脈拍動の減弱,上下肢の分離チアノーゼ(differential cyanosis)がみられる.ductal shockでは,呼吸促進,尿量減少,全身蒼白がみられる.管後型は狭窄は緩徐で,下行大動脈への側副血行路が発達するため,学童期以降に発見されることもある.
➋検査所見
1)胸部X線
心拡大,肺うっ血がみられる.
2)心電図
左室後負荷および肺うっ血,肺高血圧による両室肥