高安動脈炎は大動脈とその主要分枝を侵す原因不明の炎症性疾患であり,男女比は約1:9と女性に多く,発病年齢は15~30歳頃が多い.炎症は血管腔を狭窄させ,血栓症を起こしうる.後期に動脈壁の弱さから動脈瘤を生じることもある.時に肺動脈および冠動脈を侵す.
高安動脈炎の発症機序は依然として不明であるが,なんらかの感染症が引き金になっている可能性がある.それに引き続いて自己免疫的な機序によって血管炎が進展することが考えられている.厚生労働省難治性血管炎に関する調査研究班の報告によると,高安動脈炎患者の98%は家族歴を有さない.わが国においては免疫制御にかかわるHLAクラスⅠ分子-B*5201,B*3902との有意な相関が知られている.特にHLA-B52陽性高安動脈炎患者では,強い血管炎を生じる傾向があり,ステロイド投与量が比較的多量となる.さらに,大動脈弁閉鎖不全症の合併する割合がB52陽性例では増加している.
▼症状・徴候
患者の約半数は,初期に倦怠感,発熱,寝汗,体重減少,関節痛,疲労などの炎症性消耗性疾患の像を呈す.この時期は次第に沈静化し,その後は大動脈弓部と胸椎領域における大動脈の分枝の虚血に由来するさまざまな症状によって特徴づけられる,慢性的な病期へと移行する.残りの半数の患者は,初期の病巣症状を示すのみである(表3-49図).
病巣症状には,腕を使用したときの痛みに伴って,頸動脈および椎骨脳底動脈の虚血発作によって起こる失神や一時的な視覚障害がある.筋肉の萎縮が顔や腕に起こりうる.胸部下行大動脈の閉塞は,時に大動脈縮窄症の徴候を引き起こす.腹部大動脈(特に腎動脈)が侵されると,患者は腎血管性高血圧症を示す.高安動脈炎は,冠動脈の炎症を起こすことがあり,これによって狭心症または心筋梗塞を引き起こす.まれに大動脈弁閉鎖不全症を起こし,これらの続発症や高血圧症は最終的に心不
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