▼定義
慢性的な下肢静脈の機能不全により表在静脈の異常拡張および蛇行を呈するものを下肢静脈瘤とよび,静脈のうっ滞症状を伴う.
▼病態
静脈には深筋膜より深い部分を走行する深部静脈と,皮下を走行する表在静脈があり,表在静脈内の血流は穿通枝を介して深部静脈に流入する.さらにその血流は主に下腿の筋肉ポンプなどの働きで重力にさからって心臓に向かうが,その血流が逆流しないように一方向性の静脈弁によって遮られている.しかし,筋肉ポンプ作用の低下,静脈弁機能不全や深部静脈血栓症などが生じると,還流障害をきたし,その末梢側の静脈圧が亢進する.その結果,表在静脈が拡張し静脈瘤を形成する.うっ滞症状として,疼痛,倦怠感,浮腫,こむら返りなどを認め,他覚所見として,色素沈着,脂肪皮膚硬化症などの皮膚病変を認める.次第に進行し,皮膚潰瘍を伴うようになり,QOLを大きく侵す.
▼疫学
まれな疾患ではなく,国内では40歳以上の約10%に認め,女性は男性の約3倍罹患率が高い.さらに高齢になるにつれ割合が増加する.
▼分類
原因により一次性と二次性に分類される.
➊一次性
表在静脈および穿通枝の静脈弁そのものに原因があるものをいう.静脈形成異常によるKlippel-Trénaunay(クリッペル-トレノネー)症候群などの先天性と,妊娠,加齢,長時間の立ち仕事,肥満,喫煙などが危険因子となって発症する後天性がある.
➋二次性
深部静脈血栓症の後遺症として,静脈閉塞または静脈弁不全により発症したものをいう.
▼診断
うっ滞症状を確認し,坐位や立位の姿勢で視診を行い,静脈瘤所見を確認する.下肢静脈エコーにより非侵襲的に確定診断ができる.坐位または立位で行い,弁不全により表在静脈血の逆流所見を確認し,逆流の原因部位や範囲を同定する.この際,深部静脈血栓症の有無も必ず確認する.その他,空気容積脈波検査(air plethysm
関連リンク
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