診療支援
治療

【1】内分泌異常
諸岡 俊文
(山元記念病院・循環器内科部長)
野出 孝一
(佐賀大学教授・循環器内科)

 内分泌系ホルモンやペプチド蛋白は,心血管機能と密接に関連しているため,腺組織の機能不全や組織学的変化に伴う各種ホルモンの分泌過剰あるいは分泌不全が生じると,心血管病をもたらすことがある.機序としては,当該ホルモンの絶対的機能的過不足により,脂質,糖代謝などへの影響,直接的心筋細胞障害,血管平滑筋障害などを生じ,これによって心血管系への影響をもたらすと考えられる.

下垂体ホルモンと心血管疾患

 下垂体前葉からは,GHやACTH,プロラクチンが分泌され,これらは心血管疾患に寄与する代表的ホルモンである.また,下垂体後葉からは,水利尿を調整するADHやオキシトシンが分泌される.

1)先端巨大症(acromegaly)

 GHの過剰分泌により,身体の変化や代謝異常を伴う疾患であり,原因のほとんどがGH産生下垂体腺腫である.有病率は人口10万人あたり4~24人と比較的まれな疾患であるが,約6割に心疾患の合併をきたし,健常人と比較して死亡率が2~3倍と高い.心血管危険因子といわれる高血圧症の合併は33~46%,糖尿病は15~38%と多く,その他に脂質異常症,インスリン抵抗性を示す例もある.特に糖尿病を有する先端巨大症の約20%は,寿命20年と短い.

 骨端線閉鎖前に発症したGHの過剰分泌では,下垂体性巨人症といわれ,高身長を特徴とする.また骨端線閉鎖後の成人期に発症したものは先端巨大症といい,四肢末端や鼻の肥大,眉弓部膨隆,巨大舌,口唇肥大,下顎の突出などの特徴的な顔貌を呈する.

 診断は,特徴的顔貌や身体症候を確認し,血中GH値や血中IGF-Ⅰを測定する.特に75g OGTT糖負荷試験において,GH値が抑制されないことは診断に有用である.その後,頭部MRIなどにより,下垂体腺腫の存在を確認する.

 治療は,基本的に下垂体腺腫の切除が第一選択となり,完全摘出困難例や手術困難例では薬物療法や放射線

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?