診療支援
治療

1 口内炎
stomatitis
森山 雅文
(九州大学大学院歯学研究院・口腔顎顔面病態学)

▼定義

 口腔粘膜の比較的広範囲あるいは散在性に起こる炎症の総称を口内炎という.炎症が限局している場合は舌炎,口唇炎,歯肉炎,口角炎などという.

▼病態

 口内炎の原因としては,細菌やウイルスの感染,補綴物(義歯や矯正器具)による物理的刺激,アレルギー(金属や薬物)などが挙げられるが,原因が特定できないことが最も多い.また,免疫力の低下,ビタミン欠乏,精神的ストレス,口腔乾燥なども口内炎の誘因となる.

▼分類

 口内炎はその多くが原因不明であることや病理学的特徴が乏しいことから,的確に分類することは困難である.一方で,病変が直視あるいは触知できることから,臨床像による分類が診断・治療を行ううえで有用である.

▼診断

 口内炎に診断基準はなく,主に視診と触診で診断する.また,全身疾患が原因である場合は血液検査や免疫学的検査も必要である.

アフタ性口内炎(aphthous stomatitis)

 最も一般的な口内炎である.アフタ(aphtha)とは,口腔粘膜に生じる輪郭明瞭な紅暈を伴う潰瘍で,潰瘍面は白色ないし灰白色の偽膜で被覆されている.Behçet(ベーチェット)病の口腔粘膜病変として知られているが,原因不明なことが多い.治療は,局所的に副腎皮質ホルモン薬含有の軟膏や貼付薬を用いるのが一般的であるが,難治症例では免疫抑制薬の投与が有効との報告もある.

カタル性口内炎(catarrhal stomatitis)

 粘膜表在性で組織破壊をほとんど伴わない滲出性炎をカタル(catarrh)とよぶ.免疫力の低下や口腔清掃不良などによる口腔内常在菌の増殖・感染が原因とされる.通常,含嗽剤と口腔清掃により数日で治癒する.

ウイルス性口内炎(viral stomatitis)

 単純疱疹,帯状疱疹,麻疹,手足口病,ヘルパンギーナなどがあり,いずれも小水疱,びらん,潰瘍を主症状とする.その中でも単純ヘルペス

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