診療支援
治療

1 胃巨大皺襞症(メネトリエ病)
gastric giant fold(Ménétrier disease)
飯島 克則
(秋田大学教授・消化器内科・神経内科)

疾患を疑うポイント

●原因不明の低蛋白血症を認め,かつ内視鏡検査,またはX線検査で胃粘膜襞の肥厚を認めた場合,Ménétrier病を疑う.

▼定義

 胃の形態異常としての胃巨大皺襞症は,内視鏡検査,または,胃X線検査で胃の襞の肥厚を認める状態をいう.そのうち,Ménétrier病は,胃巨大皺襞症と胃粘膜からの蛋白漏出による低蛋白血症を伴う病態であり,その本態は,胃体部の腺窩上皮細胞の過形成性である.

▼病態

 Ménétrier病では,胃腺窩上皮過形成によって,巨大皺襞,蛋白漏出,胃酸分泌低下といった特徴的所見を呈する慢性持続性の疾患であり,その病因は,いまだ明らかになっていないが,家族内発症はきわめてまれであり,アレルギー,免疫異常などの後天性要因が関与していると考えられている.

 ヒトでの胃粘膜組織の免疫組織学的検討,および,マウスモデルを用いた基礎的検討から,Ménétrier病でみられる腺窩上皮過形成の病態形成には,トランスフォーミング増殖因子α(transforming growth factor-α:TGFα),上皮増殖因子(epidermal growth factor:EGF)の産生亢進が大きく関与していることが明らかになっている.成人では,Helicobacter pylori感染によって,慢性のMénétrier病類似の病態を呈することがあるが,多くは,除菌治療によって改善する.

▼疫学

 検診の内視鏡,または,胃X線観察時に胃巨大皺襞症は,5~6%でみられるとされ,比較的頻繁にみかける所見である.ただし,これらの大部分は,H. pylori感染に伴う慢性胃炎の一病型で,皺襞肥大型胃炎(enlarged fold gastritis)とよばれるもので,除菌治療によって,巨大皺襞の改善をみる.それを除いた典型的なMénétrier病は,胃巨大皺襞症のうち8%のみと報告され

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