診療支援
治療

1 機能性ディスペプシア
functional dyspepsia(FD)
岩切 勝彦
(日本医科大学主任教授・消化器内科学)
星野 慎太朗
(日本医科大学・消化器内科学)

▼定義

 ディスペプシアとは,胃もたれ心窩部痛食後の早期飽満感などを表す症状であり,その多くは食事刺激に伴って生じることが多い.器質的,全身性,代謝性の疾患がないことが前提条件のため,それ自体が予後を規定するような疾患ではないが,その反面で長期間症状が持続し,患者のQOLを著しく下げることが知られている.また患者数が非常に多いことも問題であり,過去の研究から,国民の1~2割程度がFDである可能性が示唆されている.またFD症状を主訴に医療機関を受診した患者を対象とした検討では,器質的疾患の検索を行い最終的にFDと診断される例は50%前後である.

▼病因・病態

 FDは,多様な疾患を含有している症候群に近い疾患であることから,病態を一元的に説明することは困難で,その病因・病態は多岐にわたる.

FDの病因

 過去に検討されてきたFDの病因としては,胃酸過多,遺伝的素因,腸管感染症後の炎症残存,幼小児期・成長期の強いストレス(不安や被虐待歴),Helicobacter pylori(H. pylori)感染,胃の形状(胃下垂,瀑状胃),生活習慣(高脂肪食,喫煙)などがある.

FDの病態

 FDの病態としては,消化管運動異常,内臓知覚過敏,消化管粘膜の炎症,腸内細菌叢の異常が考えられている.消化管運動異常としては胃排出能障害,胃適応性弛緩障害,十二指腸運動障害などが,内臓知覚過敏としては酸・脂肪に対する知覚過敏,消化管伸展に対する知覚過敏などが,消化管粘膜の炎症,腸内細菌叢の異常としてsmall intestinal bacterial overgrowth(SIBO)やその他の腸内細菌叢の乱れが報告されている.

▼診断

 FDを診断するにあたり,病歴聴取と身体診察,検体検査,上部消化管内視鏡検査が必須であり,必要に応じて内視鏡以外の画像検査,消化管機能検査,質問票が行われる.

機能性消化管疾

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