診療支援
治療

(2)自己免疫性胃炎
下山 克
(青森県総合健診センター・所長)

疾患を疑うポイント

●低ビタミンB12血症,悪性貧血.

●高ガストリン血症.

●胃体部のみの胃粘膜萎縮.

学びのポイント

●抗壁細胞抗体,抗内因子抗体が産生され,胃体部に慢性活動性胃炎が生じ,胃粘膜萎縮をきたす.自己免疫的(autoimmune)機序に基づくことからA型胃炎とよばれてきた.

▼診断

 上部消化管内視鏡検査を行い,胃体部を中心とした胃粘膜萎縮を認める.ガストリン濃度と血中抗壁細胞抗体,抗内因子抗体を測定する.血清ペプシノーゲン濃度も診断に有用である.

▼治療

 長期の高ガストリン血症による神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor:NET)のリスク,萎縮した胃粘膜からの分化型腺癌のリスクがあるので,定期的に内視鏡検査を行う.また,ビタミンB12,貧血についても経過観察を行い,必要な場合は補充を行う.

実習のポイント

◉必ず確認する問診事項

□上腹部症状:酸に関連するものかどうか

□胃癌・消化性潰瘍の既往,家族歴

□過去の除菌治療の有無

□貧血の有無

◉見逃してはならない身体所見

□ピロリ菌感染者の多くは無症候性である.

□ビタミンB12欠乏,鉄欠乏では貧血

◉注目すべき検査所見

□内視鏡所見

□各種ピロリ菌感染検査法の結果

トピックス

【京都分類】

 日本の標準的な内視鏡診断学でピロリ菌感染胃炎を診断する所見を明確にし,胃癌のリスクとなる所見をスコア化するために作成された胃炎の内視鏡分類である.

 ピロリ菌現感染者にみられる所見としては,びまん性発赤・白濁した粘液・皺襞腫大・鳥肌胃炎がある.胃粘膜萎縮,腸上皮化生,黄色腫は現感染者と既感染者に認められる所見である.除菌成功者では地図状発赤,色調逆転現象,胃底腺ポリープが観察されることがある.ピロリ菌未感染者でも胃底腺ポリープが観察されるが,未感染者に特徴的な所見としては,胃体下部~胃角部小弯に集合細静脈が規則的に配列するRAC(regular a

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?