▼定義
1990年代の全大腸内視鏡検査の普及と2000年代以降の小腸内視鏡検査の導入・普及により,NSAIDsは上部消化管のみならず小腸・大腸にも粘膜傷害(潰瘍と腸炎)を引き起こすことが明らかとなった.
NSAIDs起因性小腸・大腸病変は,低用量アスピリン薬薬を含むNSAIDsによって正常な小腸ないし大腸に惹起された粘膜傷害と定義される.
▼病態
NSAIDsによる小腸粘膜傷害の発症機序として,シクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenase:COX)の抑制を介した内因性プロスタグランジン合成阻害と薬剤の腸粘膜に対する直接作用による粘膜透過性の亢進により,胆汁,消化酵素,細菌や食物などの腸管内因子が粘膜内に侵入し炎症を惹起することが推察されている.
▼疫学
カプセル内視鏡ないしバルーン内視鏡を用いた観察研究ないし介入研究により,低用量アスピリンを含むNSAIDs服用者の約50~80%になんらかの小腸粘膜傷害を認めることが明らかとなっている.大腸病変の頻度は不明であるが,比較的まれと推察される.
▼診断
本症の診断は,従来の薬剤性腸炎の診断基準に準拠する.後述のように,本症の内視鏡所見・病理組織学的所見は,ともに非特異的な所見にとどまるため,診断において「NSAIDsの使用中止のみによる病変の治癒軽快の確認」が最も重要となる.
▼分類
本症はその内視鏡所見から潰瘍型と腸炎型に,さらに潰瘍型は膜様狭窄(diaphragm-like stricture)合併の有無により分類される(表4-22図).潰瘍型の大部分を占める非狭窄型では無症状の症例が少なくないが,膜様狭窄合併例では数年間にわたるNSAIDs使用歴を有し腸閉塞症状を呈する.腸炎型はNSAIDsの内服開始から1~2週間以内に下痢・発熱を主徴として急性発症する.
▼内視鏡所見と病理組織学的所見
小腸病変はカプセル内視鏡ないしバルーン
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