診療支援
治療

1 クローン病
Crohn disease
久松 理一
(杏林大学教授・消化器内科学)

疾患を疑うポイント

●体重減少や発熱などの全身症状を伴い,慢性に経過する下痢,腹痛.

●若年者の難治性痔瘻や肛門周囲膿瘍.

●小児においては不明熱や成長発育障害を契機に診断されることがある.

学びのポイント

●Crohn病は口から肛門まで全消化管に起こりうる慢性炎症性疾患.

●進行するにつれて腸管合併症(狭窄,瘻孔など)に至り,外科的治療介入が必要となる.累積再手術率も高い.

●治療目標としては臨床症状の改善に加えて,長期的予後の改善を目指す.血清CRPの陰性化や内視鏡的寛解が治療目標として提唱されている.

▼定義

 潰瘍性大腸炎とともに炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)に分類される.若年者に多い.Crohn(クローン)病では口腔から肛門に至るまでの全消化管に炎症や潰瘍が起こりうる.特に小腸と大腸が好発臓器である.非連続性の病変分布(病変と病変の間に正常部分が存在すること,skip lesion),縦走潰瘍敷石状外観といった特徴的な内視鏡またはX線像を呈する.一般に慢性の経過をたどり,腹痛や下痢,血便,体重減少などが生じる.

▼病態

 本疾患の原因は不明であるが,遺伝学的背景(疾患感受性遺伝子),環境因子(食事,衛生環境)などが関与した多因子疾患であると考えられている.腸内細菌や食事抗原に対する宿主側の免疫応答異常が存在し,腸管局所におけるさまざまな炎症性サイトカイン(TNF-α,IL-23,IFN-γ,IL-6など)の産生が亢進している.近年の研究から,病態に腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)が関与していると考えられている.

▼疫学

 日本では指定難病となっており特定医療費(指定難病)受給者証所持者数は41,068人(平成29年度)であるが,患者数は増加傾向にあり疫学的検討では約7万人の患者が存在すると推定されている(2018年度時点).10~20歳

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?