診療支援
治療

12 好酸球性消化管疾患
eosinophilic gastrointestinal disorders
江﨑 幹宏
(佐賀大学医学部附属病院・光学医療診療部診療教授)

疾患を疑うポイント

●腹部症状は腹痛,下痢をきたすことが多く,大半の症例で末梢血の好酸球増多を伴う.

●約半数の症例で気管支喘息を中心とするアレルギー性疾患の合併をみる.

学びのポイント

●本症は,食事抗原などに反応して消化管でのIL-5,IL-13,IL-15,eotaxinなどのサイトカイン産生により,好酸球やマスト細胞が活性化され消化管傷害をきたすアレルギー性疾患と考えられている.

●特徴的な内視鏡所見はなく,粘膜に炎症の主座がある場合でも好酸球浸潤がとらえられない場合があるため,複数箇所から生検組織を採取する必要がある.

●副腎皮質ステロイド剤が奏効するが,減量・中止に伴い再発することが多い.

▼定義

 食物などをアレルゲンとして慢性に消化管傷害をきたすアレルギー性疾患で,好酸球性食道炎と好酸球性胃腸炎(eosinophilic gastroenteritis)に分類されている.本項では構成上の都合から,好酸球性胃腸炎について述べる.

▼病態

 好酸球性胃腸炎の病因は以下のように推測されている.消化管粘膜において食事抗原などの刺激によりIL-5を中心としたサイトカイン産生が誘導されると,IL-5はIL-3,顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(granulocyte macrophage colony-stimulating factor:GM-CSF)とともに骨髄での好酸球産生ならびに活性化を誘導する.さらに,Th2サイトカイン刺激により上皮細胞などから産生されたエオタキシン(eotaxin)により,粘膜局所へ好酸球浸潤が引き起こされる.組織に浸潤した好酸球はIL-5により活性化され,ロイコトリエンやプロスタグランジンなどの炎症性メディエーターやeosinophil derived granule proteins(EDGPs)を放出して細胞傷害を惹起するとともにマスト細胞を脱顆粒さ

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