診療支援
治療

2 バッド-キアリ症候群
Budd-Chiari syndrome
瀬川 誠
(山口大学医学部附属病院・漢方診療部准教授)
坂井田 功
(山口大学大学院教授・消化器内科学)

▼定義

‍ 肝静脈の主幹あるいは肝部下大静脈の閉塞,狭窄により門脈圧亢進症に至る症候群である.わが国では,両者を合併している病態が多い.

▼病態

 腹水,浮腫,肝脾腫,腹壁静脈怒張などの門脈圧亢進症状を伴い,多くはうっ血性肝硬変へ進展する.原発性と続発性があり,原因として,凝固能亢進(骨髄造血疾患,先天性凝固因子欠損症,経口避妊薬の内服など),肝膿瘍,胆管炎,悪性腫瘍,外傷,免疫異常などが考えられている.病状が進行すると肝細胞癌を合併することがある.

▼疫学

 年間の受療患者数の推定値は190~360人である(2005年全国疫学調査).男女比は約1:0.7とやや男性に多い.

▼診断

画像検査

 肝静脈主幹あるいは肝部下大静脈の閉塞や狭窄を認める.肝はうっ血性に腫大し,特に尾状葉は著明に腫大する.脾臓の腫大も認める.

病理検査

1)肝臓の組織所見

 急性のうっ血では,肝小葉中心帯の類洞の拡張がみられ,うっ血が高度の場合には中心帯に壊死が生じる.うっ血が持続すると,肝小葉の逆転像(門脈域が中央に位置し肝細胞集団がうっ血帯で囲まれた像)の形成や中心帯領域に線維化が生じ,慢性うっ血性変化がみられる.さらに線維化が進行すると,主に中心帯を連結する架橋性線維化がみられ,線維性隔壁を形成し肝硬変の所見を呈する.

▼治療・予後

 カテーテルを用いた開通術や拡張術,ステント留置術,手術などが行われる.肝不全例には,肝移植を考慮する.食道胃静脈瘤に対する内視鏡治療や脾機能亢進症に対する脾臓摘出術などが行われる.

 予後については,急性型では肝不全により死亡する例が多いのに対し,慢性型,特に肝部下大静脈閉塞では比較的経過が長い例が多い.原因となる肝静脈の閉塞部が手術により治癒した場合には比較的予後は良好であり,10年生存率は約79%とされる.肝不全や食道胃静脈瘤,肝細胞癌の合併が予後に影響を与える.

参考文献

1)「難治性

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