診療支援
治療

1 薬剤性膵炎
drug-induced pancreatitis
正宗 淳
(東北大学大学院教授・消化器病態学)

疾患を疑うポイント

●原因不明の急性膵炎の成因として薬剤性を念頭におく.

学びのポイント

●種々の薬剤が急性膵炎の原因となりうる.

●原因薬剤の中止が治療の大原則であり,適切に診断することが重要である.

▼定義

 治療目的で投与された薬剤により膵炎,特に急性膵炎を発症したものである.広義には薬剤性膵炎として,事故,自殺目的で服用された薬剤,薬物およびアルコール過飲による膵炎も含まれるが,アルコール過飲による膵炎は通常アルコール性膵炎として別に扱う.臨床像は通常の急性膵炎に準ずる.

▼病態

 薬剤性膵炎の発症機序は不明な点が多いが,①薬物に対するアレルギー反応,②直接あるいは代謝産物による細胞障害,③膵管閉塞などが想定されている.①は5-アミノサリチル酸(メサラジン),アザチオプリン,メルカプトプリン(6-MP),メトロニダゾールなど多くの薬剤の発症機序として想定されている.膵炎発症は投与後1~6週間で,30日以内に発症することが多い.発症には個人差があり,用量に依存しない.②の場合,薬剤投与後24時間以内のような短時間で発症すると考えられるが,報告例はほとんどない.コデインによる膵炎はOddi(オッディ)筋の収縮作用により膵管閉塞が起こり,膵液の流出が障害され発症に至ると考えられている.

▼疫学

 2003年受療患者を対象としたわが国の疫学調査では,急性膵炎2,694例中,主治医が薬剤(薬物)を成因と判断したものは21例(0.8%)にすぎず,重症膵炎例に限っても1.1%と膵炎の成因としては比較的まれである.男女差,好発年齢はみられない.

▼診断

 急性膵炎の診断や重症度判定は,ほかの成因による急性膵炎と同様である.厚生労働省による報告では原因薬剤としての可能性を分類するために4要件が挙げられている.すなわち①当該薬剤の投与中に膵炎を発症,②ほかに膵炎の原因がみられない,③薬剤の中

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