診療支援
治療

(1)二次性糖尿病,遺伝子異常による糖尿病
secondary diabetes and monogenic diabetes
田中 大祐
(京都大学大学院・糖尿病・内分泌・栄養内科学)
稲垣 暢也
(京都大学大学院教授・糖尿病・内分泌・栄養内科学)

疾患を疑うポイント

●糖尿病診療においては,ほかの疾患・症候群や病態の一部として伴った糖尿病状態である可能性を常に念頭におき,病歴・臨床所見に注意を払うべきである.

●遺伝子異常による糖尿病は,主に若年発症であること,および特徴的な家族歴・臨床所見から疑い,診断する.

学びのポイント

●「ほかの疾患・条件に伴う糖尿病」を表6-7に示す.糖尿病・糖代謝異常の原因であるほかの疾患・症候群や病態を的確に診断・把握することで,原因そのものの治療・解決や,原因に応じた最適な糖尿病治療選択が期待される.

●1型糖尿病・2型糖尿病はともに多因子遺伝疾患と考えられている.一方,単一遺伝子異常による糖尿病の原因として,膵β細胞発生・機能に関与する遺伝子異常や,インスリン作用の伝達機構にかかわる遺伝子異常が明らかとなっている(表6-8).発症年齢・家族歴・臨床所見から単一遺伝子異常が疑われる場合は,遺伝子診断を行うことで病態の把握および最適な治療選択が可能となる.

▼定義・病態・分類

ほかの疾患・条件に伴う糖尿病

1)膵外分泌疾患に伴う糖尿病

 膵炎・膵腫瘍・膵切除術などに伴うものをいい,膵β細胞機能障害によるインスリン分泌低下を主体とする.

 慢性膵炎においては,膵外分泌組織のみならず膵内分泌組織も破壊される.慢性膵炎の約40%に糖尿病が合併し,アルコール性慢性膵炎において,また,石灰化膵炎(膵石症)において糖尿病合併(膵性糖尿病)がより高頻度である.

 急性膵炎に伴う糖代謝異常は発症初期にみられ,重症例において高率にみられるが,急性膵炎治癒後糖尿病は消失することが多いとされる.

 自己免疫性膵炎は膵腫大・膵管の狭細化および血清IgG4上昇を特徴とする疾患で,約70%に糖尿病の合併がみられる.

 膵癌に伴う糖尿病の発症機序として,膵島への直接浸潤のほか,主膵管閉塞に伴う閉塞性膵炎による膵β細胞機能障害が挙げられ

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