診療支援
治療

2 糖尿病(性)腎症
diabetic nephropathy
宇都宮 一典
(東京慈恵会医科大学総合健診・予防医学センター・センター長)

疾患を疑うポイント

●糖尿病が発症して約5~10年の経過で,微量アルブミン尿の出現をもって臨床的に診断する.

●糖尿病網膜症の合併は糖尿病腎症を疑う根拠となる.

●網膜症を伴わない0.5g/gクレアチニン以上の蛋白尿を呈する場合は,非糖尿病性腎疾患の鑑別を必要とする.

学びのポイント

●糖尿病の三大合併症〔本症のほかに糖尿病網膜症,糖尿病神経障害.いずれも細小血管症(microangiopathy)である〕の代表であり,現在のわが国における新規透析の約40%を占め,原因疾患としては第1位.

●糖尿病腎症は早期腎症(微量アルブミン尿)の段階から心血管疾患による死亡が増え,そのリスクは病期の進行とともに増加する.糖尿病腎症の治療は,腎障害の進行の抑制のみならず,心血管疾患リスクの低減につながる.

●治療は血糖,血圧,脂質異常の管理,食事療法として減塩,たんぱく質制限があるが,その治療的意義はステージによって異なる.

▼定義

 主に慢性的な高血糖によって惹起され,特徴的な糸球体の病理学的所見(びまん性病変,結節性病変滲出性病変)を呈する腎疾患を糖尿病腎症とよんでいる〔第9章のも参照〕.臨床的には5~10年の糖尿病罹病歴があり,血尿を伴わない微量アルブミン尿もしくは持続性蛋白尿をもって診断する.糖尿病網膜症の合併は重要な臨床情報となる.

▼病態

‍ 輸入細動脈から血液が流入すると糸球体で限外ろ過が行われ,血液は輸出細動脈を通して大循環に戻される.糸球体ろ過率(glomerular filtration rate:GFR)はろ過面積とろ過圧によって規定されるが,高血糖状態では,輸入細動脈が拡張するために糸球体血管の内圧が上昇する.この結果,糸球体ろ過率が上昇し,糸球体過剰ろ過(glomerular hyper filtration)を呈する.この状態が続くと,糸球体障害をきたすと考えられている(糸球体

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