診療支援
治療

(1)原発性高カイロミクロン血症
primary hyperchylomicronaemia
石橋 俊
(自治医科大学教授・内分泌代謝学)

疾患を疑うポイント

●乳び血清,急性膵炎,発疹性黄色腫が診断の契機になる場合もあるが,血清TG値1,000mg/dL以上の場合に疑う.

学びのポイント

●高カイロミクロン血症の多くは,糖尿病・メタボリックシンドローム・飲酒に起因するが,遺伝性や自己免疫機序が背景にある場合がある.

●LPL,アポC-Ⅱ,アポA-Ⅴ,GPIHBP1,LMF1の欠損症が原因となるが,大半の症例で原因遺伝子を同定できない.

●急性膵炎の予防が治療目標となる.脂肪制限・禁酒が重要.

▼定義

‍ カイロミクロンの著明に増加するタイプの脂質異常症を高カイロミクロン血症とよぶ.Fredrickson(フレデリクソン)の分類でⅠ型とⅤ型高脂血症が該当する.空腹時の血清TG値が1,000mg/dL以上を呈する.明らかな続発性の原因がない場合を原発性高カイロミクロン血症とよび,指定難病認定のための診断基準がある(表6-26).家族性高カイロミクロン血症症候群(familial chylomicronemia syndrome:FCS)ともよばれる.

▼病態

 カイロミクロンは食事性脂肪の吸収に伴って,小腸から分泌されるリポ蛋白であり,含有されるトリグリセリド(TG)はリポ蛋白リパーゼ(lipoprotein lipase:LPL)の作用を受けて通常はすみやかに分解される.空腹時のカイロミクロンの存在は,カイロミクロンの異化障害の存在を示す.LPLまたはLPL活性調節にかかわる蛋白〔アポリポ蛋白(アポ)C-Ⅱ,アポA-Ⅴ,glycosylphosphatidylinositol anchored high-density lipoprotein binding protein A1(GPIHBP1),lipase maturation factor 1(LMF1)〕の異常に起因する(図6-19).機能欠失型の遺伝子変異に起因す

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