診療支援
治療

1 体質性黄疸
constitutional hyperbilirubinemia
中牟田 誠
(国立病院機構九州医療センター・肝臓センター部長)

疾患を疑うポイント

●肝障害を伴わないビリルビン上昇(黄疸).

●日常診療や健診で最も遭遇するものは,Gilbert症候群であり間接型優位のビリルビン上昇を示す.

学びのポイント

●先天性のビリルビン代謝異常により血清ビリルビンが上昇したものであり,その原因として肝細胞障害,胆道閉塞,溶血などの関与がないものである.

●体質性黄疸には,間接型(非抱合型)ビリルビンが上昇するGilbert症候群,Crigler-Najjar症候群(Ⅰ型,Ⅱ型)と,直接型(抱合型)ビリルビンが上昇するDubin-Johnson症候群,Rotor症候群が存在する.

●Crigler-Najjar症候群Ⅰ型と一部のⅡ型を除いて,一般的に予後は良好であり治療を必要としない.

▼定義

 体質性黄疸とは,肝細胞の先天的(遺伝的)なビリルビン代謝異常(取り込み,抱合や排出など)により発症する黄疸である〔第5章「ビリルビン代謝異常」の項()参照〕.

▼病態

 成人の場合には間接型(非抱合型)ビリルビンが,主に老廃赤血球由来のヘムより1日約300mg産生されている.間接型ビリルビンは水溶性が低いために通常アルブミンに結合して肝臓へ輸送される.肝細胞においては,類洞側より受動輸送により取り込まれるが,有機アニオン輸送ポリペプチド(organic anion transporting polypeptide:OATP)1B1/3(OATP2やOATP-Cとも呼称される)による能動輸送も推測されている.次に,小胞体膜上のUDP-グルクロン酸転移酵素(UDP-glucuronosyl transferase:UGT)1A1によりグルクロン酸抱合を受けて水溶性の直接型(抱合型)ビリルビンとなり,毛細胆管膜に存在するmultidrug resistance-associated protein(MRP)2により能動的に胆汁中へ排出される.

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