診療支援
治療

2 エーラス-ダンロス症候群
Ehlers-Danlos syndrome
平田 恭信
(東京逓信病院・名誉院長)

▼定義

‍ コラーゲンの構造,機能にかかわる遺伝子の変異により発症し,13のサブタイプがある.特に皮膚と関節の過伸展が特徴的である.血管,子宮,腸管などの内臓の結合織も侵され,それぞれの破裂などの合併症がある.

▼病態

 結合織疾患の一種でコラーゲン自体あるいはそのプロセッシングにかかわる酵素などをコードする遺伝子の変異による結合織疾患である.

 いずれの原因遺伝子でも皮膚,靱帯,関節,血管ならびに内臓が障害されるが,特に関節の可動域の拡大,皮膚の過伸展ならびに組織の脆弱性が目立つ.1/4以下の患者で大動脈瘤を発症する.

▼疫学

 常染色体優性あるいは劣性遺伝形式を示す.下記の分類のサブタイプのうち,古典型Ehlers-Danlos(エーラス-ダンロス)症候群が約90%を占め,血管型Ehlers-Danlos症候群は5%である.発症頻度は1人/5,000~25,000人である.

▼分類

 原因遺伝子およびその機能によって13タイプに分類され,古典型Ehlers-Danlos症候群はコラーゲン線維をコードする遺伝子であるCOL5A1/COL5A2の変異により,血管型はCOL3A1の変異により発症する.

▼診断

 古典型Ehlers-Danlos症候群では関節可動域の拡大,萎縮性瘢痕を伴う皮膚の過伸展がみられる.それらの所見以外にMarfan症候群でみられるような骨格の変形も認められる.初発症状は小児期の皮下出血であることが多い.組織過伸展によるヘルニア,脱肛,関節脱臼などが生じやすく家族歴を認める.

 血管型Ehlers-Danlos症候群は皮膚,関節症状よりむしろ独特の顔貌と血管の破裂しやすさが特徴である.特に腎動脈,腸骨動脈,腸間膜動脈,肝動脈ならびに大腿動脈のような中型動脈が侵されやすい.腸管や子宮の易破裂性を伴い,家族歴を認める.13種のサブタイプの症状はオーバーラップが多く,臨床所見だけ

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