診療支援
治療

(4)ラトケ囊胞
Rathke pouch cyst
山田 正三
(森山脳神経センター病院・間脳下垂体センター・センター長)

▼定義

 胎生期のRathke(ラトケ)囊の遺残から生じる非腫瘍性囊胞性病変.

▼病態

 囊胞は前葉と後葉の間に存在することが多い(図7-12f).組織学的に囊胞壁は単層の線毛を有する立方・円柱上皮と基底細胞からなり基底膜を有する.囊胞内容液は多彩.大多数のRathke囊胞は無症候に経過し,治療を要さない.しかし一部の症候例では視機能障害,下垂体機能障害や尿崩症,激しい頭痛などの症状を呈する.

▼疫学

 MRIの普及で,偶発腫として発見される頻度が増えている.症候例は全年齢層(特に30~50歳)にみられ,女性に多い.小児例はまれである.

▼診断

 画像所見から通常診断は比較的容易であるが,鞍内型の頭蓋咽頭腫,囊胞性下垂体腺腫,下垂体卒中,下垂体膿瘍と鑑別を要する.

▼画像所見

 囊胞内容液は,蛋白とコレステロールを含み,信号強度に影響を与える.高蛋白濃度ではT1高信号,T2低信号,髄液様あるいは黄色透明になるとT1低信号,T2高信号となる.まれに鞍上部に存在することもある(鞍上部タイプのRathke囊胞).

▼治療

 無症候例は経過観察.症候例(視機能障害,急激な下垂体機能低下症,激しい難治性頭痛)では外科的治療が選択される.

 手術は経蝶形骨洞法による囊胞開放術(ドレナージと壁の部分切除)を行う.

▼予後

 大多数の無症候例の長期予後は良好である.術後は10~20%で囊胞の再増大を認める.

実習のポイント

◉必ず確認する問診事項

□小児例か,成人発症例か.

□下垂体機能亢進の症状,下垂体機能低下の症状のチェックや対座法による視野異常の簡便なスクリーニング.

◉見逃してはならない身体所見

□それぞれのホルモン過剰による身体所見を見落とさない.

□下垂体機能低下の症状を見落とさない.

◉注意すべき検査所見

□下垂体機能検査の結果.

□視機能検査の結果.

□血中や髄液中のAFP,HCGβ,PLAPの値.

□MRI所見.

◉チェッ

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