診療支援
治療

(1)副腎腺腫,副腎過形成(ACTH非依存性大結節性副腎皮質過形成)
方波見 卓行
(聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院・代謝・内分泌内科教授)

疾患を疑うポイント

●疾患特異的徴候があり,その存在が診断の決め手となる.

●後述の生活習慣病を若年発症または複数併発する例では本症を疑う.

学びのポイント

●Cushing症候群の本態は慢性的なコルチゾール過剰であり,その成因にACTHの分泌過剰が関与する場合をACTH依存性(下垂体性,異所性),しない場合をACTH非依存性(副腎性)とよぶ.

●高血圧,糖尿病,骨粗鬆症などのcommon diseasesとして加療されていることも多く,診断に直結する特異的徴候を見落とさないことが,最重要.

●診断検査は,コルチゾール過剰の有無を判定する検査(低用量デキサメタゾン抑制試験など)とコルチゾール過剰産生部位を同定する検査に大別される(高用量デキサメタゾン抑制試験など).

●原因病変を摘出すれは治癒可能だが,放置とすると重症感染症などを併発して,死に至る場合がある.

▼定義

‍ 慢性的なグルコ(糖質)コルチコイド(コルチゾール)の過剰により特異な身体的徴候(Cushing徴候,Cushingoid)を呈する疾患群.

▼病態

 グルココルチコイドは糖,脂質,蛋白,骨代謝など多彩な作用を有するため,その異常は多彩な症候,病態を惹起する(表7-36)

 グルココルチコイドの過剰は末梢組織(骨格筋)での糖取り込み・糖利用の抑制,インスリン抵抗性増大,肝糖新生促進を惹起し,耐糖能異常を引き起こす.脂質代謝では脂肪合成を促進させ,血中LDLコレステロール,中性脂肪は上昇する.また脂肪分布を変化させ,野牛肩,満月様顔貌,中心性肥満をもたらす.蛋白の異化促進作用により近位筋萎縮,皮膚菲薄化・断裂,皮膚線条,皮下出血が生じる.

 さらに過剰なグルココルチコイドは,骨芽細胞機能抑制,尿カルシウム排泄促進,腸管でのカルシウム吸収低下などの機序により骨粗鬆症や尿路結石を発症させる.高血圧はグルココルチコイドのもつミネラルコル

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