診療支援
治療

5 副腎偶発腫瘍
adrenal incidentaloma
栗原 勲
(慶應義塾大学専任講師・腎臓内分泌代謝内科)

疾患を疑うポイント

●腹部CTおよびMRIの画像読影の際に,副腎に注目する.胸部CT検査でも撮像範囲の下端に副腎領域が含まれており,副腎偶発腫瘍の有無のチェックが可能.放射線科医は,画像読影の際に,ルーチンで副腎偶発腫のチェックを行っている.

●疾患の定義上,副腎疾患を疑って撮影された画像検査で副腎腫瘍が指摘された場合は,副腎偶発腫とはよばない.

学びのポイント

●近年,人間ドックを含め,日常臨床ではCTなどの画像検査が多用されるようになっており,それに伴い,副腎偶発腫が指摘される症例が増えている.

●多くは良性腫瘍かつホルモン異常を伴わない非機能性腫瘍であるため,手術をせず経過観察が可能.一方で,手術が必要な症例も含まれており,診療のアルゴリズムを理解してきちんとマネジメントする必要がある.

▼定義

 副腎疾患の評価以外の目的で撮影された画像検査にて指摘された副腎腫瘍.

▼病態

 画像検査上の診断名であり,後述するようにさまざまな病態の副腎腫瘍から構成される.日常臨床で施行される頻度の高いCT検査における発見が最も多い.多くの人間ドックメニューでは,CT検査が含まれている.一方,施行される頻度の高い画像検査としては,超音波検査もあるが,超音波検査では副腎の描出は難しく,超音波検査で副腎偶発腫が指摘されることは少ない.腫瘍径の大きいものは,超音波検査で指摘されることもある.MRI検査は,CTと同じように副腎腫瘍の描出にすぐれているが,CTに比べると画像検査として汎用されておらず,MRI検査で副腎偶発腫が指摘されることもまれである.近年,悪性腫瘍診断の検査として施行されることが徐々に増えているFDG-PET検査でも,副腎偶発腫が指摘される症例がある.

▼疫学

 腹部CT検査で副腎偶発腫が発見される頻度は,0.3~0.8%とされている.年齢が進むにつれてその頻度は増し,生涯を通じては約7%の人に副腎

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?