疾患を疑うポイント
●ホルモン過剰症状があり,本来のホルモン産生器官に腫瘍が検出されない.
学びのポイント
●本来のホルモン産生器官に腫瘍が検出されないときは,異所性ホルモン症候群を考える.
●ホルモン基礎値に加え,画像診断やホルモン負荷試験などが必要.
●治療は原疾患の腫瘍摘出.
▼定義
本来のホルモン産生器官以外で生じた腫瘍が,生物活性のあるホルモンを過剰に産生し,症状や検査値の異常がみられる場合,異所性ホルモン症候群という.異所性ホルモン症候群は腫瘍随伴症候群の1つ.
▼病態生理
消化管や膵島,肺などに存在する神経内分泌由来細胞が腫瘍化して,各種のホルモンを産生する.肺小細胞癌,膵島癌や気管支カルチノイドなどが,異所性ホルモン産生腫瘍となりやすい.また,正常細胞では発現が抑制されていた遺伝子が腫瘍化に伴い発現が亢進して,異所性にホルモンが産生されることもある.
▼診断
異所性ホルモン症候群は,以下の手順で証明する.
➊血中ホルモン濃度の高値
ホルモンを不規則に分泌する腫瘍もあり,複数回の採血が必要なこともある.
➋血中ホルモンの生物活性
血中ホルモンの測定だけでなく,生物活性をもつ分子型の同定が重要である.例えば,ACTH前駆体を産生する腫瘍では,ACTHの代わりに生物活性の弱いACTHの大分子型を生成することがある.
➌腫瘍組織でのホルモン産生
腫瘍組織中のホルモンを免疫組織化学や遺伝子の発現で確認する.
➍腫瘍からのホルモン放出
腫瘍を栄養する動脈と静脈のホルモン濃度較差を認める.腫瘍摘出後に血中ホルモン濃度が正常化する.
しかしながら,臨床の現場ではすべての条件を満たすことは困難なことも多い.
▼分類
➊異所性ACTH産生腫瘍
ACTH依存性Cushing(クッシング)症候群を呈する患者のうち,異所性ACTH産生腫瘍は約10%を占める.神経内分泌細胞を起源とする異所性ACTH産生腫瘍は,肺
関連リンク
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